東大ら,薄膜物質を自動・自律合成するシステム構築

著者: sugi

東京大学,東京科学大学,日本電子,堀場製作所,リガク,島津製作所,デンソーウェーブ,パスカル,テクトスは,機械学習とロボット技術を活用した自動・自律実験システム(デジタルラボラトリー)を構築し,研究者が指定した物質を自動的・自律的に合成することに成功した(ニュースリリース)。

近年,マテリアル研究において,機械学習やロボットを組み合わせた研究手法が世界中で発展しており,新素材のいち早い発見が望まれている。しかし日本国内では,実験操作やデータ解析における繰り返し作業が手作業に依存しているケースがいまだ多い。

研究では,自動・自律実験の実証を行なった。具体的に,モジュール化された実験機器を複数接続し,機械学習とロボット技術を最大限活用して自動・自律的に実験を進めた。物質の結晶構造を同定する際に用いられるXRD測定において,粉末物質では解析の自動化が実現しているが,薄膜物質での報告はいまだなかった。

薄膜試料のXRDパターンには,薄膜と基板の両方の情報が含まれている。また,薄膜試料は成長方位に依存した回折ピークのみが現れるため,多結晶体での測定に比べて回折ピークの数が少ない。そのため,研究では薄膜試料のXRDパターンを自動解析する方法を開発し,自律実験システムに適用して単結晶基板上エピタキシャル薄膜を成長させた。

具体的には,自動・自律実験のワークフローを構築し,Al2O3(0001)基板上に作製したLiCoO2(001)エピタキシャル薄膜より得られた面直XRDパターンの解析に適用した。薄膜由来の各回折ピークをLiCoO2の003,006,009,0012,0015反射に帰属し,003と006のピーク強度比が最大となるように自律的な成膜を行なった。

このピーク強度比を最大化することはLiCoO2(001)薄膜の結晶性を高めることを意味している。最適化アルゴリズムにはベイズ最適化を採用した。その結果、基板温度 660℃で最も結晶性の高いLiCoO2(001)薄膜を得た(図3)。

研究グループは,研究を自動化・自律化するためのデジタル技術(機械学習とロボット技術)を開発し,新材料の創出スピードを飛躍的に高めることを目指す。特に,セラミックス材料や粉体を原料とする材料の合成・焼成・特性評価・分析の全自動化・自律化は,現時点で世界的に前例がなく,技術的課題も多いという。

東京大学に設置する協働ラボでは,世界最先端のセラミックス材料自律実験システムを実現する。また,研究者が創造性を最大限発揮できる環境を整備し,日本の研究力強化に貢献するとしている。

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