北海道大学の研究グループは,機械学習によってバンドギャップ(光吸収の指標)を精密に予測・設計できるペロブスカイト無機材料の開発手法を確立した(ニュースリリース)。
近年,マテリアルズインフォマティクスの発展により,機械学習を用いた新材料設計が急速に進展している。とりわけ,光エネルギーを活用する太陽電池や光触媒材料においては,材料のバンドギャップの最適化が性能を左右する重要因子。しかし,バンドギャップは材料の構造や原子配置に強く依存するため,実験的に制御することは非常に困難だった。
これまでの研究では,単一の組成や構造に対する計算的な探索にとどまり,機械学習による設計が実験まで結びつく例は限られていた。そこで研究グループは,機械学習でバンドギャップを精密に予測し,実際に合成と検証まで行なう一貫した材料開発手法の確立を目指した。
研究グループは,過去の実験文献から収集した282種のペロブスカイト型化合物のバンドギャップ情報をもとに,構造情報と元素の特徴から数千種類におよぶ記述子(特徴量)を生成した。その後,独自のアルゴリズム「MonteCat法」によって最適な記述子を選定し,サポートベクター回帰(SVR)モデルを構築した。これにより,構造や組成に基づいてバンドギャップを高精度で予測するモデルを開発した。
次にこのモデルを用いて,理論的に安定とされる1852種の仮想ペロブスカイト化合物のバンドギャップを予測した。その中から,太陽光応用に適した0.45‒2.2eVのバンドギャップと,構造安定性を満たす86種の有望候補を選定した。
そのうち4種(LaCrO3,LaFeO3,YCrO3,YFeO3)を実際に合成し,X線回折(XRD),走査電子顕微鏡(SEM-EDS),紫外可視分光(UV-vis-NIR)によって,構造・組成・バンドギャップの予測通りの特性を持つことを確認した。
この研究により,構造・組成情報から記述子を抽出 → バンドギャップを予測 → 実際に合成 → 物性評価で検証という,機械学習と実験を融合した新たな材料開発フローの構築に成功した。
研究グループは,バンドギャップという感度の高い物性に対して,記述子ベースでここまで高い予測精度を実現し,さらに合成と一致させた研究は非常に珍しく,今後の材料開発の標準モデルとなることが期待されるとしている。
