高輝度光科学研究センター(JASRI),技術研究組合FC-Cubic,京都大学は,大型放射光施設SPring-8における燃料電池材料の放射光実験分析データを体系的に収集・管理するためのデータベース「FC-BENTEN」を開発した(ニュースリリース)。
燃料電池材料の開発においては,性能や耐久性を左右する複雑な構造や化学状態を高精度に評価することが求められる。特にSPring-8における放射光施設を活用した分析手法は,その詳細な情報取得に有効だが,実験データの再現性確保や共有・活用のための体系的な仕組みはこれまで不十分だった。
こうした状況の中,データの質と活用性を高め,マテリアルズ・インフォマティクス(MI)との連携も視野に入れたデータベースの整備が強く求められていた。
研究グループは,燃料電池材料の研究開発を支援する放射光実験データベース「FC-BENTEN」を構築した。XAFS,HAXPES,XRD,PDF,SAXSなど多様な放射光測定手法に対応し,メタデータの体系化と自動化された登録ツールにより,高品質なデータを効率的に管理・共有できる仕組みを実現している。これにより,材料開発における分析プロセスの信頼性とデータ再利用性が飛躍的に向上した。
研究グループは,このデータベースでの取り組みを通じて得られた知見は,今後の燃料電池材料研究における実験データの蓄積や活用を考えるうえで,有用な手がかりとなると期待されるとしている。