甲南大ら,絶縁機構モット型とスレーター型を区別

甲南大学,大阪公立大学,大阪大学,理化学研究所,立命館大学,摂南大学,日本大学,チェコ マサリク大学らは,物質が「モット型」か「スレーター型」か,という絶縁機構の違いを区別することに初めて成功した(ニュースリリース)。

遷移金属酸化物において絶縁性が現れるメカニズムには,電子間の強い相互作用による「モット機構」と,磁気秩序によってバンド構造が変化する「スレーター機構」が知られている。しかし,実際の物質においてこれらを実験的に区別することは難しく,広く普及している価電子帯光電子分光法では解明が困難だった。

研究では,互いに似た構造を持つSr2IrO4と Sr3Ir2O7という2種類のイリジウム(Ir)酸化物をモデル物質として内殻光電子分光実験を行ない,スペクトルの温度変化を理論計算(LDA+DMFT)に基づき詳細に解析することで,スペクトル形状の変化がモット型かスレーター型かの“指紋”を持つことを明らかにした。

これは,大型放射光施設SPring-8のビームラインBL19LXUにて量子ビームの一種である放射光を利用した硬X線光電子分光(HAXPES)実験を行ない,最新の電子構造計算手法(LDA+DMFT法)を組み合わせることで得た成果。

ここで“指紋”とは,非局所的な電荷応答(nonlocal screening)に由来するスペクトルの変化を意味する。これにより,これまで難しかった磁気秩序と絶縁化の起源の識別が可能になった。

モット型は電子同士の強い反発により絶縁化し,スレーター型は磁気秩序によってバンド構造が変化し絶縁性を示す。この違いは,次世代の低消費電力・高速動作を目指す電子デバイスや量子材料の設計において本質的な情報だという。

また,今回の研究では,光電子分光という局所的な手法でありながら,非局所的なスピン相関や磁気秩序の情報を抽出できることを理論的・実験的に実証し,これまで困難だった量子材料の内部状態の診断に新しい道を拓いた。

研究グループは,将来的に高性能メモリ材料や量子コンピューティング素子の開発に寄与し,より快適で持続可能な社会の実現に貢献することが期待される成果だとしている。

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