日揮とPXPは,横浜市内の施設屋根において,フィルム型カルコパイライト太陽電池(CIS太陽電池)を用いた大面積発電モジュールの実証実験を開始したことを発表した(ニュースリリース)。
カーボンニュートラル時代に向けて再生可能エネルギーの拡大が必要とされる中,次世代太陽電池として,軽く,薄く,曲がる特徴を持った薄膜太陽電池が注目されている。薄膜太陽電池においては,有機半導体系のペロブスカイト太陽電池や,無機化合物半導体系のカルコパイライト太陽電池がある。
PXPは,国産フィルム型次世代太陽電池の研究開発と量産化に取り組んでいるスタートアップ企業。ペロブスカイト太陽電池に加えてカルコパイライト太陽電池を重ねる(タンデム型にする)ことで,2つの太陽電池が持つ異なる波長特性を組み合わせた,高効率かつ軽量な太陽電池モジュールを研究開発している。
日揮が開発した産業関連施設の屋根向け施工方式「シート工法」では,遮熱シートに薄膜太陽電池を載せたものを発電モジュールとして一体化し,グリッパーと呼ぶスリットのある筒状の金具で屋根に固定する。これにより,薄膜太陽電池の軽く,薄く,曲がるという特徴を損ねず,着脱可能な状態で取り付けることが可能。
両社は,本年4月よりまずは1年間を目安に,カルコパイライト太陽電池単体を使用した大面積モジュールによるキロワット規模の発電実証を横浜市内の日揮グループ所有施設内で開始した。この実証で使用する発電モジュールは,あらかじめ電気的に接続した複数の薄膜太陽電池を基材シート上に並べて10m2という大面積を実現したものであり,このような手法で薄膜太陽電池の大面積化を試みた実証は国内初だという。
大面積モジュールは,工場や倉庫等の折板屋根を模した屋外環境にシート工法で施工した。今回の大面積モジュールでは面積あたり約2kgと軽量なうえ,配線を削減したことで設置作業・配線作業の能率化・効率化を実現し,作業員一人当たり一日に換算して100m2の施工ができることを確認した。
この実証では,薄膜太陽電池の大面積化におけるシート工法の適用可能性,PXPの薄膜太陽電池が持つ,振動や衝撃に強い特性の有効性を確認するという。発電量や耐久性といったデータをシート工法および薄膜太陽電池の開発にフィードバックすることで,次世代太陽電池の早期社会実装を目指すとしている。