九州大、職場行動を長期記録できる名札を開発 室内光と動きで充電不要

九州大学の研究グループは、特性の異なる2種類の太陽電池と、動きを電気に変える素子を組み合わせた装置を設計・開発した(ニュースリリース)。

(写真)電池にほとんど頼らないウェアラブル端末「ZEL+」の利用イメージ
(A)退勤後、端末を窓辺などの明るい場所に置き、室内の光から電気をためる。
(B)翌朝、出勤時に名札のように装着し、業務中の行動記録を開始する。
(C・D)デスクワークやオフィス内の移動中も、自動で場所や行動を記録する。
(E)1日の終わりにスマートフォンでデータを確認できる。

ウェアラブル端末は、健康管理や行動分析など幅広い分野で活用されている。しかし、多くの端末は毎日の充電が必要であり、電池切れや充電忘れが長期利用の障壁となっていた。特に屋内環境では発電量が限られるため、電池に頼らず継続的に動作する技術の実現が大きな課題であった。研究グループはこれまで、周囲の光や人の動きから得られるエネルギーを単なる電力源として活用するのではなく、環境の違いや人の動きの違いを検知するセンサーとしても活用する方法を模索してきた。発電信号そのものに含まれる情報を読み取ることで、電力供給と環境認識を同時に実現できる可能性に着目した。

今回の研究では、発電とセンシングを一体化した名札型ウェアラブル端末「ZEL+」を開発した。この端末は、特性の異なる2種類の太陽電池と、人の動きに反応する素子を組み合わせることで、電力を生み出すと同時に環境や行動の違いを読み取る仕組みを実現している。暗い室内でも安定して動作する太陽電池と、明るさの変化に敏感な太陽電池を併用することで、部屋ごとの光環境の違いを検知できる。さらに、人の動きに応じて電圧が変化する素子を組み合わせることで、静止している状態と移動している状態を区別できるようにした。

また、発電量が不足した場合には自動的に省電力状態へ移行する電力制御機構を導入した。これにより、環境に応じて動作を切り替えながら、できる限り発電のみで動作する設計としている。実際のオフィス環境で11名の参加者に装着して評価した結果、8種類の場所識別で96.62%、静止/移動の識別で97.09%の高い精度を達成した。さらに、10名による8時間の実験では、平均93.97%の時間を発電のみで動作させることに成功した。従来の単純な構成では発電のみで動作できる割合は4.63%にとどまっており、今回の研究の設計が大幅な改善につながったことが確認された。これにより、室内環境においても実用的な「電池にほとんど頼らないウェアラブル端末」の実現可能性が示された。

今回の研究により、室内環境でも電池にほとんど頼らず動作するウェアラブル端末の実現可能性が示された。今後は、より軽量で装着しやすい形状への改良を進め、日常生活や職場で無理なく使える設計を目指す。また、現在はデータ解析の一部を外部で行なっているが、将来的には端末内での処理を実現し、より自律的に動作する仕組みへと発展させるという。これにより、リアルタイムでのフィードバックや行動支援への応用も可能になる。さらに、長期間の運用実験を通じて、実際の利用環境でどの程度エネルギーを自給できるかを詳細に検証し、完全自律型の「電池不要ウェアラブル」の実用化を目指し、職場での健康管理や見守り支援など、持続可能な行動記録基盤としての社会実装が期待されるとしている。

キーワード:

関連記事

  • スタンレー電気など、ライフスタイルのトレンド見本市で次世代ライティングを発信

    スタンレー電気はF-WAVE、ナベル、オカムラ、杉原商店と出展協力し、フランスのパリ・ノール・ヴィルパント国際展示場で2026年1月15日から19日まで開催される、ライフスタイルの最新トレンドを発信する見本市「メゾン・エ…

    2026.01.13
  • 三菱電機,次世代太陽電池開発でJAXA公募に選定

    三菱電機は,宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施する宇宙戦略基金第一期の公募テーマの一つである「衛星サプライチェーン構築のための衛星部品・コンポーネントの開発・実証」(分野:衛星等)において,技術開発課題「国産太陽電池…

    2025.08.22
  • 三菱電機,宇宙向け太陽電池強化狙い米企業に出資

    三菱電機は,シリコン技術を用いた宇宙向け太陽電池セルを開発・製造する米国発のスタートアップ企業,Solestial(ソレスティアル)へ出資した(ニュースリリース)。 近年,人工衛星の小型化,低価格化が進み,低軌道でのコン…

    2025.06.10
  • 東北大,7割の屋根にPV設置で電力自給率85%と試算

    東北大学の研究グループは,日本全国1741市町村を対象に,住宅などの屋根上太陽光パネルと電気自動車(EV)を組み合わせて家庭の電力をまかなうシミュレーションを行ない,大幅な脱炭素効果を明らかにした(ニュースリリース)。 …

    2025.05.27
  • 日揮ら,フィルム型CIS太陽電池の実証実験を開始

    日揮とPXPは,横浜市内の施設屋根において,フィルム型カルコパイライト太陽電池(CIS太陽電池)を用いた大面積発電モジュールの実証実験を開始したことを発表した(ニュースリリース)。 カーボンニュートラル時代に向けて再生可…

    2025.05.15

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア