東北大学の研究グループは、3GeV高輝度放射光施設「Nano Terasu」のビームラインBL10Uで得られる高輝度テンダーX線を利用し、X線タイコグラフィと計算機断層撮影を組み合わせることで、市販のCMOSイメージセンサー(CIS)の内部三次元構造を約30nmの分解能で非破壊観察・定量評価することに成功した(ニュースリリース)。
近年、CISの高性能化に伴って、光学構造の立体化や絶縁膜の多層化など、複雑な三次元構造の設計・制御が進んでいる。そのため、開発段階や製造プロセスにおいて、ナノメートルスケールで構造を非破壊に可視化する新たな評価技術が求められている。
従来の透過型電子顕微鏡による断面解析は、高い分解能を持つ一方で、試料の破壊を伴い、三次元構造全体を正確に把握することは困難だった。また、非破壊観察に優位なX線顕微鏡を用いても、シリコンや酸化膜などの軽元素材料を含む構造では、コントラストが得にくく、実装状態に近い試料内部を非破壊で観察するには限界があった。これらの課題を解決するため、実デバイス構造をそのままの状態で三次元的に、かつ軽元素に対しても高い感度を持つX線可視化技術の確立が強く求められていた。
研究グループは、3GeV高輝度放射光施設「Nano Terasu」の高輝度テンダーX線ビームライン(BL10U)を活用し、CISの画素構造を対象とした非破壊・三次元観察を世界で初めて実現した。対象としたのは、1画素サイズが600nm程度の商用CISデバイスであり、4keVに単色化したコヒーレントX線を用いて、X線タイコグラフィと計算機断層撮影(CT)を組み合わせることによって、電子密度分布の三次元イメージングを実現した。
得られた再構成像では、光導波路構造、深堀絶縁構造(DTI)、金属配線などが約30nmの分解能で可視化され、特に、SiとSiO2といった電子密度の近い軽元素材料の分布を高コントラストで識別することに成功した。また、DTI内部に形成されたナノスケールの隙間構造も明瞭に検出され、プロセス由来の構造不良を非破壊で評価できる新たな手法としての有効性が示された。
この手法は、CISに限らず、MEMSデバイス、フォトニック素子、パワー半導体、メモリデバイスなど、多様な三次元集積デバイスに対して適用可能な非破壊評価技術として注目されるという。特に、硬X線では困難であった軽元素材料の識別に優れることから、今後の微細構造設計や製造プロセスの最適化に大きく寄与することが期待されている。





