日本国際賞,デュプイ氏がMOCVD法の開発で受賞

国際科学技術財団は,2025年Japan Prize(日本国際賞)の受賞者を発表した(ニュースリリース)。2025年4月16日に天皇皇后両陛下が出席され,授賞式が行なわれた。

今年は,「物質・材料,生産」分野からラッセル・ディーン・デュプイ氏(米ジョージア工科大学教授)と,「生物生産,生態・環境」分野からカルロス・M・ドゥアルテ氏(スペイン アブドラ王立科学技術大学生物環境理工学部 特別教授)の両氏が受賞した。

このうち,デュプイ氏は光関連の受賞となり,「化合物半導体電子・光デバイスのための有機金属気相成長法の開発と大規模商用化への先駆的貢献」が評価された。有機金属気相成長法(MOCVD)は,有機金属化合物ガスを供給原料として用いるエピタキシャル結晶成長技術の一種である。

ラッセル・ディーン・デュプイ氏

薄膜面内での膜厚の偏差が少なく高速成長が可能であるほか,超高真空を必要としないために装置の大型化が容易であるなどの利点を有するため,現在では青色発光ダイオード(LED)を含む種々のLED・半導体レーザー・太陽電池などの化合物半導体電子・光デバイスの大規模商用生産に必須の手法となっている。

デュプイ氏はMOCVD技術発展の黎明期において,その手法をデバイス作製に適用し,GaAs/AlGaAsダブルヘテロ半導体レーザーの室温連続発振,量子井戸レーザーや高効率太陽電池の実証を世界に先駆けて報告した。

1977年には,MOCVDによるものとしては世界で初めて実用に耐える半導体ヘテロ構造の作製に成功し,その有用性を実証。研究がブレークスルーとなったのは,結晶成長プロセスの詳細な解析と,これに基づいた反応器の設計などで格段の進歩を遂げた点にあるという。

具体的には,全溶接型の原料ガス供給容器を独自設計して可能な限りクリーンでリークのないシステムを構成するとともに,コンピュータ制御によるバルブスイッチを採用して,急峻なヘテロ接合とドーピングプロファイルを有する不純物の少ない高品質なエピタキシャル成長を初めて実現した。デュプイ氏の成果は大規模商用生産技術としてのMOCVDの優位性を決定づけた先駆的なものとされている。

今年度は,国内外約15,500名の著名な科学者や技術者に依頼し,「物質・材料,生産」分野で149件,「生物生産,生態・環境」分野で72件の推薦を受けた。推薦された計221件の候補の中から,今回の受賞者を決定した。

授賞式では天皇陛下がお言葉を寄せられ,「受賞されたそれぞれの研究を通じて,科学技術の発展や人々の暮らしの利便性の向上,また持続可能な地球環境の実現に向けて大きく貢献されたことに深く敬意を表します」と述べられた。

日本国際賞は1981年に,世界の科学技術の発展に資するという政府の構想により,民間からの寄付を基に創設されたもので,この賞は全世界の科学技術者を対象とし,独創的で飛躍的な成果を挙げ,その進歩に大きく寄与した人に贈られる。

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