阪大,ガラスの「秩序変数」を新しい理論で説明

著者: sugi

大阪大学の研究グループは,ガラスの「秩序変数」を新しい理論で説明し,固体における「秩序」の本性を解明した(ニュースリリース)。

「秩序変数」とは,固体・液体・気体など,物質の「相」を区別するための指標の一つで,これを考察することにより,物質の状態を特定する。たとえば,水の密度や,磁石の強度などが,この秩序変数として使われている。

結晶では,原子が規則正しく並んでいるので,その並び方(周期性)に「秩序がある」とされる。一方ガラスは原子の並び方に規則性はないため「ガラスの秩序変数」は結晶の秩序変数とは別のものと解釈されてきた。

磁石は,ある温度(転移温度:Tc)以下で強磁性を持つ。その結晶を構成する原子がスピンXを持ち,Tc以下の温度では,各原子のもつスピンの向きが一定方向に揃い,巨視的に観測されるような強い磁場を作り,これが秩序状態となる。

Tc以上の温度では強磁性はなくなる。これは各原子のスピンがなくなったのではなく,それぞれの向きが時間的にランダムに変動し,時間平均を取ると0になる。これが無秩序状態に対応する。

この場合の無秩序には二つの種類がある。一つが各原子のスピンの向きがばらばらであること(空間的な周期性の消失),もう一つが時間的にばらばらであること(時間平均が0)。研究では,秩序変数を後者の時間相関に関するものに限定することで,整合性のある理論が構築できることを示した。

例えば周期性のない2次元の原子配置に対してX線回析実験を行なえば,アモルファスと結論される。しかし実は歪んだ座標で観測すると完全な正方格子となり,完全な秩序を持つ。したがって「秩序」という場合,状態変数の定義と本質的に同じで,時間的に変わらない(熱擾乱によっても不変を保つ)ことのほうがより本質的となる。

固体の場合,周期性の有無に関係なく,平衡位置はある決まった値を取るため,それは状態変数でありかつ秩序変数でもあると結論される。つまり状態変数は,平衡状態でその値が変わらないものという事実より,それから逆に状態変数を定義できる。今回それが秩序変数の定義と同じであることを見いだした。これにより,長年謎であったガラスの諸問題,例えばPrigogine-Defay比が1以上になる問題も説明できるという。

今回,ガラス,結晶を区別することなく,秩序変数の共通の定義が可能であることを示した。この理論では,固体における秩序とは「時間的に変わらないこと」が本質的だとする。 研究グループは,理解が困難であったガラスの熱的性質,さらに熱力学的取り扱いが困難であったヒステリシスの研究の解決が期待される成果だとしている。

キーワード:

関連記事

  • 【interOpto2025】夏目光学、可視化実験用モデルを展示

    interOpto / 光とレーザーの科学技術フェアで、夏目光学【可視化技術フェア No. B-16】は、可視化実験用モデルを展示している。 展示されていたのは、エンジンのシリンダーなど車載部品をガラスで製造したものだ。…

    2025.11.12
  • 【interOpto2025】五鈴精工硝子、透過・拡散ガラス・両面レンズアレイを展示

    interOpto / 光とレーザーの科学技術フェアで、五鈴精工硝子【紫外線フェア No. C-15】は、紫外線殺菌・露光装置に注目される成型可能な紫外線透過ガラス「IHUシリーズ」、高い拡散効果と安定した配光特性を誇る…

    2025.11.11
  • 東大ら,単一元素金属がガラス化する仕組みを解明

    東京大学と中国松山湖材料実験室の研究グループは,単一元素(金属)がガラス化するメカニズムを大規模シミュレーションにより解明した(ニュースリリース)。 金属ガラスは,結晶性金属にはない高強度や耐食性,優れた加工性などの特性…

    2025.09.12
  • 島根大ら,放射光で金属ガラス若返り現象を観測

    島根大学,広島大学,弘前大学,高エネルギー加速器研究機構,東北大学は,金属ガラスに液体窒素温度と室温の間を繰り返して上下させる「極低温若返り効果」を起こすことで電子状態が変化することを,放射光を用いた実験で明らかにした(…

    2025.09.11
  • 三重大ら,原発瓦礫のセシウムをレーザーでガラス化

    三重大学,海洋研究開発機構,太平洋コンサルタント,帝塚山大学,東電設計は,レーザーを援用したその場固定化により,コンクリート中にセシウム (Cs)を閉じ込めてガラス体を形成することに成功した(ニュースリリース)。 福島第…

    2025.04.21
  • 筑波大ら,THz帯を透過するガラス材料設計に知見

    筑波大学,東京科学大学,大阪大学,東京大学,立命館大学,京都大学は,ガラスにあるわずかな原子の周期構造(見えない秩序)が,ガラスの物性に影響を及ぼすテラヘルツ帯の揺らぎ(振動特性)を決定する重要な要因であることを明らかに…

    2025.04.15
  • 技科大,レーザー造形技術で次世代の電池を開発

    長岡技術科学大学の研究グループは,レーザー誘起局所加熱による溶融凝固によってイオン伝導する界面形成に成功した(ニュースリリース)。 全固体電池は高いエネルギー密度と,極めて高い安全性を実現できる次世代蓄電デバイスとして研…

    2025.04.08
  • 東大ら,ソフトジャム固体とガラスの繋がりを発見

    東京大学と九州大学は,ソフトジャム固体の粘弾性を理解することに成功した(ニュースリリース)。 我々の身の回りには,マヨネーズや泡沫など,固体とも液体ともつかない物質がたくさんある。これらの物質の共通点は,柔らかい球状粒子…

    2025.01.16

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア