三重大学,海洋研究開発機構,太平洋コンサルタント,帝塚山大学,東電設計は,レーザーを援用したその場固定化により,コンクリート中にセシウム (Cs)を閉じ込めてガラス体を形成することに成功した(ニュースリリース)。
福島第一原子力発電所(1F)における事故は,放出された放射性物質によって引き起こされる環境問題の中で,今後も続く課題の一つ。1Fの廃炉措置は,依然として重大な環境問題であり続けている。
2011年3月,三陸沖でマグニチュード9.0の地震が発生し,1Fプラントにいくつかの損傷が発生した。この損傷により炉心溶融と水素爆発が発生し,大量の放射性廃棄物が発生した。
2023年9月時点で,放射性廃棄物として保管されているコンクリートと瓦礫の総量は,表面線量率が0.1~1mSv/hのものが42,600m3,表面線量率が1~30mSv/hのものが16,400m3となっている。
将来的には,建物の解体や燃料集合体から生じるコンクリート廃棄物と瓦礫の推定量は,低表面線量率のコンクリート廃棄物で約130,000m3,中表面線量率の廃棄物で約60,000m3となっている。このすべての廃棄物を効果的に管理し,長期保管することが重要であり,効率的な減容の必要性が不可欠となっている。
このプロセスの重要な目標は,放射性廃棄物の容量を減らすために137Csを効果的に固定化すること。この技術は,コンクリートの表面に付着した放射性物質をガラスに埋め込むことで捕捉し,廃炉措置中にガラスだけを取り除くことを可能にする。
研究グループは,まず,1Fの原子炉建屋と同じ組成の133Csを混ぜたコンクリートに高輝度レーザービームを照射してCsを固定化した。次に,分布,移動,溶出の観点からCsの原位置固定化の特性を調査した。
その結果,コンクリート中にCsを閉じ込めてガラス体を形成することに成功した。X線回折(XRD)の結果,レーザー照射されたコンクリートはガラス化していることが示された。電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)の測定結果から,Csは溶融コンクリートの内部において,骨材の分布に依存する不均一性を持っていることが示された。
Cs捕捉率の実験値は99%で,模擬低レベル雑固体廃棄物の従来のプラズマ溶融による捕捉率である57%よりも高い値が得られた。Csの浸出に関し,正規化された浸出率は0.06~0.08g/m2で,ASTMインターナショナルによる閾値である2g/m2を下回った。
研究グループは,今後は,放射性廃棄物管理におけるより広範な応用に向けてこの技術を最適化することに重点を置く必要があるとしている。