慶大ら,走行中のLiDARシステムを長距離から無効化

慶應義塾大学と米カリフォルニア大学は,自動運転車両のLiDARセンサーシステムにおける新たな脆弱性を発見した(ニュースリリース)。

LiDARセンサーは,高精度な3D空間認識能力を持つことから,多くの自動運転システムに採用されている。しかし,このLiDARセンサーの安全性と信頼性が,自動運転車の普及における重要な課題となっている。

研究グループは,高速で移動する車両に対して長距離からLiDARセンサー攻撃するMVSシステムを開発した。このシステムは,IRカメラによるセンサー検出・追跡機構,高精度自動照準機構,そしてレーザー攻撃機構から構成されている。

IRカメラの導入により,LiDARセンサー自身が発するレーザー光を正確に追跡することが可能となり,110m以上離れた地点からでも車両に搭載された小型センサーを補足できるようになった。さらに,精密なサーボモーターと高度な制御アルゴリズムを組み合わせることで,移動する標的に対して0.1度以下の精度でレーザーを照射することに成功した。

実験による検証では,管理された実験用コースで実車にLiDARセンサーを搭載し,走行時の攻撃性能を評価した。60km/hで走行する車両に対して,110m離れた地点からレーザー攻撃を実施した結果,攻撃開始地点から20mの制動ブレーキ距離にわたって,平均96%の歩行者データを消失させることに成功した。

さらに,最新のLiDARセンサーに搭載されているPulse Fingerprinting防御機構を回避する新たな攻撃手法であるA-HFR攻撃を発見・実装した。従来の防御機構が想定していない高周波の攻撃により,防御機構を備えた最新のLiDARモデルに対しても,強力なデータ消失攻撃を成功させることができた。

また,オープンソースの自動運転システム「Autoware」を搭載したPixkit自動運転車両を使用し,管理された実験用コースで様々な攻撃シナリオを検証した。

まず,LiDAR点群の消失攻撃では,前方の停止車両をLiDARデータから消去することで,自動運転車が障害物を認識できず衝突を誘発可能であることを確認した。また,虚偽オブジェクトの注入攻撃では,存在しない壁をLiDARデータに挿入することで,自動運転車にブレーキを誤作動させることが可能であることを実証した。

研究グループは,この研究成果は,自動運転車両のセンサーセキュリティの重要性を示すとともに,より強固な安全対策の開発につながる重要な知見を提供するものだとしている。

キーワード:

関連記事

  • 弘前大など、UAV LiDARで地すべりの地下構造を推定

    弘前大学は、ドローン搭載レーザー計測(UAV LiDAR)で取得した地表面データから、地すべりの地下にある「すべり面」の形状を推定する新たな技術を開発したと発表した(ニュースリリース)。 図 ドローン×3D解析による、す…

    2026.06.23
  • 武蔵野市、NTT東日本、NTTモビリティ、地域公共交通への自動運転導入に向け連携協定を締結

    東京都武蔵野市、NTT東日本 東京武蔵野支店、NTTモビリティは、2026年6月16日、「地域公共交通への自動運転導入に向けた連携協定」を締結した(ニュースリリース)。 今回の協定は、武蔵野市内における持続可能な地域公共…

    2026.06.17
  • 小糸製作所、国産LiDARでデモ映像も展示【OPIE26】

    小糸製作所は、長距離・短距離向けの各種LiDARの開発を進めているが、OPIE26においてデモも交えて出展した。 同社は2018年より、LiDARベンチャー企業 米Cepton社と協業し、現在は短距離タイプと長距離タイプ…

    2026.04.24
  • 京都大学 特別教授 野田進教授

    フォトニック結晶レーザーが拓く「高輝度半導体レーザー」の次章

    半導体レーザーは小型、高効率という強みを持つ一方で、高出力化するとビームが乱れ「輝度」が伸びないという壁があった。フォトニック結晶レーザーはその常識を塗り替えつつある。その研究の先駆者である京都大学高等研究院・特別教授の…

    2026.04.02
  • 早大、AIデータセンターやLiDARを高度化する340倍増幅の光回路モニタを開発

    早稲田大学理工学術院の北智洋教授らの研究グループは、シリコンフォトニクス光集積回路において、従来のシリコンPIN型検出器と比較して約340倍もの検出感度を実現し、かつ光をほとんど減衰させない超小型の光回路モニタを開発した…

    2026.03.24

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア