公大,スーパーカミオカンデとT2Kデータを統合解析

大阪公立大学の研究グループは,ニュートリノを観測において,不確実性を減らして解析精度を向上させることに成功した(ニュースリリース)。

宇宙はビッグバンによって誕生したとされているが,素粒子物理学の理論では,物質(粒子)と反物質(反粒子)は同数生まれるはず。しかし,現在の宇宙には物質しか存在せず,反物質は人工的に生成しない限り見つからない。

この現象は,初期の宇宙で粒子と反粒子が対消滅し,光になってしまったためと考えられている。そこで,対消滅の前に粒子と反粒子の間にわずかな差異が生じ,粒子の方が僅かに多く残ったことで,現在の宇宙が形成されたと考えられている。その割合は,初期宇宙の粒子総数のわずか10億分の1に過ぎない。

研究グループは,J-PARC(茨城県東海村)で生成したミュー型ニュートリノを295km離れたスーパーカミオカンデ(岐阜県飛騨市)に送るT2K実験を実施し,ニュートリノ振動の詳細な測定を行なっている。この実験では,ニュートリノが移動する間に電子型ニュートリノへと変化する確率を測定し,ニュートリノと反ニュートリノの振る舞いの違いを明らかにしようとした。

さらに,J-PARCでは電流の向きを変えることでミュー型反ニュートリノを生成できるため,ミュー型反ニュートリノから電子型反ニュートリノへの振動確率も測定可能。15年間の測定データを解析した結果,ニュートリノと反ニュートリノの性質に差異があることが示され,CP対称性の破れの存在が強く示唆された。

また,スーパーカミオカンデではT2K実験のデータだけでなく,大気中で発生する大気ニュートリノの観測も30年にわたって行なわれている。このデータを利用することで,地球の裏側を通過するニュートリノが物質と相互作用する物質効果を利用し,質量階層の解明を試みている。

T2K実験とスーパーカミオカンデ実験のデータを統合し,それぞれの強みを生かすことで解析精度を向上させた。 統合解析では,両実験の系統誤差の相関を考慮した共通モデルを構築し,データを正確に説明できることを確認した。

その結果,ニュートリノの質量階層は順階層が好ましいことが示され,CP対称性の破れの有意性は1.9σ(97.1%)から2.0σ(97.7%)へと向上した。さらに,この破れの大きさは最大に近い値を示し,宇宙に物質が残った理由の解明に向けて重要な一歩となった。

研究グループは,ニュートリノ質量階層問題やニュートリノのCP対称性の破れに対する最終的な答えが導き出されることが期待される成果だとしている。

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