東大,半導体レジストの現像前超高速検査技術を開発 

東京大学の研究グループは、半導体製造に不可欠なレジスト材料の潜像を世界最高のスループットで可視化することに成功した(ニュースリリース)。

ムーアの法則に従い,半導体チップの性能は指数関数的に向上してきたが,これを支えるリソグラフィ技術の進化に伴い,顕微検査技術への要求も増している。顕微検査技術として広く用いられる走査型電子顕微鏡(SEM)は,主に凹凸の形状を検査できる。

そのため,露光した回路パターンの形状を検査するには,現像プロセスを経たレジストを検査に用いる必要がある。一方,露光後に形成される潜像での検査が可能になれば,現像プロセスを経ずして,回路パターンを検査することができる。

原子間力顕微鏡(AFM)を用いた潜像観察の先行研究では,微細な潜像を可視化することに成功しているが,SEMでの検査と比較して100倍以上の時間がかかることが課題だった。

今回,Laser-PEEMを用いることで,現像を経ずに潜像を可視化できる可能性が示された。Laser-PEEMは固体の化学的性質を観察できる電子顕微鏡であり,これによりレジストの化学結合の変化を敏感に検出することが可能。しかし,従来のLaser-PEEMには解像度を向上させるとスループットが低下するという課題があった。

研究グループは,連続波レーザーを光源として使用することで,このトレードオフを打破し,0.1秒の測定時間で2.6nmの解像度を達成した。この技術により,従来の半導体検査では観察が困難だった化学的パターンや不均一性を高い解像度とスループットで可視化できるようになった。

実証実験では,Laser-PEEMを用いて500nmの線幅で描画されたレジストの潜像を明瞭に可視化し,さらに現像後のレジストパターンも高いコントラストで観察できることを確認した。Laser-PEEMによる潜像観察のスループットは,AFMの80倍以上,SEMの1.5倍以上に達した。

さらに,レーザー出力やスポットサイズを最適化することで,AFMの100万倍以上,SEMの1万倍以上のスループットが実現可能であることを示した。

この技術は,HNA型EUVリソグラフィ用レジストなど,あらゆるレジストに対して適用可能であり,半導体製造の検査プロセスを大幅に効率化することが期待されるという。研究グループは,Laser-PEEMを透過型電子顕微鏡やSEMに次ぐ第三の電子顕微鏡として広く普及することを目指すとしている。

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