岐阜薬科大,可視光で制御可能なケージド化合物開発

岐阜薬科大学の研究グループは,新しいケージド過酸化物の開発を目指し,N6TBHPおよびN5TBHPの設計・合成を行なった(ニュースリリース)。

酸化ストレスは活性酸素種(ROS)によって様々な生体機能を担っていることが知られているが,その詳細については明らかになっていない。そこで,研究グループは,細胞内での酸化ストレスを綿密に制御することを目的とし,酸化ストレス誘導剤を光保護基で保護したケージド過酸化物の開発研究を行なってきた。

これまでに,BhcTBHPおよびMitoTBHPを開発し,報告している。 これらのケージド化合物は光照射によって速やかに反応し,細胞内へ酸化ストレス誘導剤であるter-butyl hydroperoxide(TBHP)を放出することができるが,細胞への影響が懸念されている紫外光(375nm)の照射を必要とし,細胞内に高濃度で存在するグルタチオン(GSH)によって容易に分解されてしまうことが懸念点となっていた。

今回,これらの点を克服した新しいケージド過酸化物の開発を目指し,N6TBHPおよびN5TBHPの設計・合成を行なった。得られたケージド化合物をリン酸バッファー中でUV-visスペクトルを測定してみると,BhcTBHPでは観察されなかった長波長側へのテーリングがN5TBHPおよびN6TBHPで観察された。

可視光領域である455nmでの吸収が認められたことから,455nmの光反応について検討したところ,N6TBHPが最も効率よくアンケージされていることがわかった。さらに細胞内を想定し,1mM GSHでそれぞれのケージド化合物の安定性を調べたところ,N6TBHPの安定性がBhcTBHPと比較し大幅に改善されていることがわかった。

N6TBHPを用いた細胞でのイメージングにおいて,455nmで細胞内TBHP放出することを確認した。安定性が増加したため,従来のもの(50µM)と比較して低濃度(10µM)で同程度のTBHPの放出に成功した。

研究グループは,このケージド化合物は,GSHが豊富に存在する細胞内でも安定に存在することができるため,酸化ストレスの研究に大きく貢献することが期待されるとしている。

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