京大ら,高プロトン伝導性で化学的に安定なCOF形成

京都大学,名古屋大学,横浜市立大学は,高いプロトン伝導性と高い化学的安定性を両立する高結晶性の共有結合性有機構造体(COF)の形成に成功した(ニュースリリース)。

COFの中心骨格にπ電子系化合物を用いることで二次元平面内に電子共役を発達させたCOFは伝導性COFとして知られ,狭いバンドギャップを有する半導体材料や光触媒などへの応用が可能になる。

一方,二次元に拡がったCOFの特徴として,用いる分子ユニットの選択で平面内電子共役を制御することが可能だが,その重なり方の緻密な制御は困難だった。

従来用いられていたピレン骨格は,COFに必要な高い結晶性を与えるユニットとして知られていた。しかし,このユニットに由来する骨格のねじれが,積層構造の制御とそれに由来する物性の精密制御の足かせとなっていた。

研究グループは,ピレンを構成する炭素原子のうち2箇所が窒素で置き換わった2,7-ジアザピレン骨格を用いたCOFを考案し,種々のリンカー分子と結合させて4種類のCOF(Aza-1P,Aza-1PF,Aza-TT,AzaPy)を合成した。

この時,リンカー分子として,2方向で結合する直線型リンカーまたは4方向で結合するリンカーを採用した。いずれの場合も四角形の周期細孔構造をもつことからテトラゴナル型と呼ばれるCOFが得られた。

粉末X線構造解析により高い結晶性を有することがわかり,伝導に有利な積層構造も示された。またAza-1Pの平面間距離は対応するピレンCOFよりも約0.1Å短いことがわかった。

得られたCOFについて,紫外可視吸収スペクトル測定と理論計算から2.1〜2.4eV程度のバンドギャップが見積もられた。また,時間分解マイクロ波伝導度測定では,トリフルオロ酢酸を加えてジアザピレンの窒素上をプロトン化することでマイクロ波伝導度が数倍高まることが示唆された。

これらの結果を受け,電気化学インピーダンススペクトル測定によりプロトン伝導度を測定したところ,Aza-TTにおいて3.4×10–2Scm–1(368K)という高いプロトン伝導度を示した。

ジアザピレンCOFはそれ自体が伝導するプロトンを有していないが,ジアザピレンの窒素サイトがプロトンを捕まえることができるため,湿潤環境で水分子のネットワーク形成により流動性の高いプロトンを保持し,輸送を効率的に行なえるとする。

研究グループは今後,機能性分子の選択と伝導条件の精査によって,COFのもつ可能性をさらに引き出していきたいとしている。

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