立教大ら,新規蛍光XAFSで超微量分析を可能に

立教大学,高輝度光科学研究センター(JASRI),東京大学は,超伝導転移端検出器(Transition Edge Sensors;TES)の利用を推進する国際研究グループと共同で,大型放射光施設 SPring-8のビームラインBL37XUにTESを持ち込み,世界で初めてTESを用いた環境試料の蛍光XAFS(X線吸収分光法)分析に成功した(ニュースリリース)。

放射光発光分光分析法(蛍光XAFS法)は,試料から発する蛍光X線・散乱X線のエネルギーを精密に計測することで,原理的にあらゆる元素の化学状態(価数や結合状態)の解析が可能。

これまでは,検出効率の高い半導体検出器を用いるとエネルギー分解能が不足し,エネルギー分解能のよい結晶分光器を用いると検出効率が低くなるというジレンマがあった。研究グループは,超伝導-常伝導の相転移点近傍の急峻な抵抗-温度特性を利用し,高エネルギー分解能と高い検出効率を併せ持つ分光装置,TESに着目し,この課題の解決を目指した。

SPring-8のビームラインBL37XUに持ち込んだTES検出器(米国NIST製)と,半導体検出器(シリコンドリフト検出器:SDD)を用いて,TESの動作実証を行なったところ,SDDでは抽出不可能な元素からの蛍光X線が分解でき,分光結晶法では困難な幅広いエネルギー領域に渡るX線スペクトルを一挙に取得することに成功した。

また,世界で初めてTESを利用した蛍光XAFSを環境試料中の微量元素の化学状態分析に応用することにも成功した。特に気候変動に関係する海洋エアロゾル中の微量な鉄の化学状態分析や,有害物質の挙動解析で重要なヒ素と共存する鉛の化学状態分析など,従来法では困難であった分析が可能となった。

また,広いエネルギー範囲での高エネルギー分解能による計測や,計測時間の飛躍的な短縮により,試料損傷の大幅低減の実現も可能になるとする。

TESのテクノロジーは日進月歩で進化しており,高速化や大有効面積化が進むことで,環境試料・宇宙化学試料・生物試料中の超微量元素の化学状態分析へ応用が期待される。今後,より高いエネルギー分解能を実現することで,さらに高度な高エネルギー分解能蛍光X線検出X線吸収端近傍構造法(HERFD-XANES法)などの発光分光法への展開も期待されるという。

研究グループは,技術の成熟化を推し進め,宇宙X線観測,原子分子物理,核物理などの基礎科学,「はやぶさ2」や将来のサンプルリターン計画における非破壊分析などに発展させたいとしている。

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