筑波大ら,放射線の種類で変わる結晶発光特性を発見

筑波大学と東北大学は,Eu添加CaF2結晶にα線を照射すると,X線を照射したときよりも長い波長の光が多く発生することを世界で初めて発見した(ニュースリリース)。

シンチレータは放射線のエネルギーを光に変換する物質。その中でもEu添加CaF2結晶は,高い発光効率および優れた光学透明性と化学的安定性を備え,さらに高純度かつ大型単結晶の合成が可能であることから,ダークマター探索など希少事象実験の有望候補とされてきた。しかし,こういった実験で一般的に用いられるパルス波形弁別法では,放射線粒子種の識別性能が十分ではなく,実際の利用には制限があった。

研究グループは,純度99%のCaF2およびEuF3粉末を,(Ca1-xEux)F2(x=0〜0.05)の組成で,内径26mm,高さ87mmの円筒形カーボンるつぼに充填し,高周波誘導加熱により溶融させた後,CF4と高純度Ar(3:7)の混合雰囲気下で結晶を成長させ,十分に混合した溶融物を徐冷することで,Eu濃度0〜5%のEu添加CaF2単結晶を得た。得られた結晶は所定の形状に加工し,鏡面研磨を施して評価試料とした。

シンチレーション測定のため,Czerny‒Turner型分光器と科学用CCDカメラを組み合わせたシステムを構築し,X線照射にはタングステンターゲット,α線照射には3MBqの密封241Am線源を使用した。試料からの発光は光ファイバーで導出し,分光,記録した。

その結果,CaF2無添加試料では発光が弱くノイズが大きいものの,280nm付近に広いバンドが確認され,既報と一致した。また,Eu添加試料では,Eu2+による424nm付近の発光と,Eu3+による590‒695nmの発光が観測された。

さらにEu濃度が高まると,Eu3+発光の比率が増加することを確認した。同一試料においても,X線励起とα線励起ではEu3+/Eu2+発光強度比が大きく異なり,例えばEu3%試料では,Eu2+発光を基準とした場合,Eu3+発光はα線照射時にX線照射時の約2倍となった。

この2倍という値は,Euの濃度が1%以上の場合,Eu濃度に依らず一定であることや,結晶の厚みを変えても変わらないことが分かった。

今回の実験で得られたEu3+/Eu2+発光強度の違いは,放射線種による電離密度の違いに起因する可能性が考えられるが,詳細な機構は未解明であり今後の検討課題として残されている。

研究グループは,この研究成果は,新しい粒子識別法および次世代の放射線検出技術の開発につながると期待されるとしている。

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