東北大ら,ブラックホールの量子もつれが既知より強い可能性を発見

東北大学と名古屋大学は共同で,ブラックホールから輻射が出る過程を模倣した量子ビット模型を提案し,その性質の理論的研究を通して,ブラックホールがこれまで考えられていた”限界”よりも強い量子的なもつれを共有できる可能性を見出した(ニュースリリース)。

ブラックホールは現代物理学の課題のひとつである量子重力理論の完成に向けて重要となることが強く期待される研究対象のひとつ。ホーキング博士によって導入されたベッケンシュタイン・ホーキングエントロピーはブラックホールの熱的なエントロピーであるとこれまで考えられており,それが量子もつれの強さの上限を与えると信じられてきた。

研究グループは,量子ビット模型を用いてこの議論の不十分な点を見出し,これまでの理論的予想が,ある種のブラックホールに対しては成り立たない可能性を指摘した。

この量子ビット模型はブラックホールの熱的な性質を再現するものになっており,そこでは零エネルギーの輻射が重要な役割を果たすという。今回,この零エネルギーの輻射が量子もつれを共有できることから,ブラックホールが極めて高温な防火壁で覆われているという仮説が論理的必然でないことを明らかにすることに成功した。

その他関連ニュース

  • JAXA,大質量星とブラックホール候補のガスを観測 2024年11月29日
  • 横国大ら,高レート量子もつれ生成手法を発明 2024年11月18日
  • 京大,パルスレーザーで高分解能量子赤外分光を実証 2024年10月10日
  • 筑波大,超高光度降着円盤の歳差運動を実証 2024年09月20日
  • 分子研ら,冷却原子型・量子シミュレータを構築
    分子研ら,冷却原子型・量子シミュレータを構築 2024年09月03日
  • 立教大,X線偏光でブラックホール近傍の変化を観測 2024年07月30日
  • JAXA,分光観測で複雑な広輝線の起源を明らかに 2024年06月17日
  • 東大,ブラックホール質量増加率が低いことを解明 2024年03月12日