阪大ら,強磁場によるレーザープラズマ閉込に成功

大阪大学,仏ボルドー大学,九州大学,台湾国立中央大学は,大阪大学の激光XII号レーザーで生成した高温かつ高密度なプラズマに,ネオジム磁の200倍程度の強さを有する,200テスラの磁場を外部から加えることで,高密度プラズマの加速が効率化出来ることを世界で初めて実証した(ニュースリリース)。

磁場がプラズマの断熱及び閉じ込めの作用を持っていることは以前から知られている。フランスにて建設中の国際熱核融合炉,核融合科学研究所の大型ヘリカル装置LHD及び量子科学研究機構で建設中の超伝導トカマク装置JT-60SAといった「磁場閉じ込め核融合装置」においては,扱うプラズマの圧力がレーザー核融合プラズマよりもかなり小さいため,数テスラの磁場でこれらの作用が得られている。

自然な流れとして,磁場が持つ断熱及び閉じ込めの作用を,レーザー核融合プラズマにも利用しようとするアイディアは昔からあったが,それに要求される磁場の強度は数百から数千テスラと非常に大きく,実現が困難だったために,理論およびシミュレーション上で議論されるのみで,実験による検証が行なわれたことはなかった。

大阪大学の研究グループは,国内最大のレーザー装置である激光XII号レーザーを,キャパシター・コイル・ターゲットと呼ばれる磁場発生装置に当てることで,微小な空間と短い時間内に,1000テスラを越える磁場を発生出来ることを2013年に発表している。

今回は,この強磁場発生法を用い,実験室内で200テスラの磁場を発生させることで,この強磁場下でのレーザー核融合プラズマの挙動を調べることに成功し,以下の三点を世界で初めて明らかにした。

(1)高温プラズマから周囲への熱エネルギーの損失が抑制され,プラズマが高温になる。
(2)高温になったプラズマによって,高密度プラズマが効率的に加速される。
(3)その一方で,流体力学的不安定性の成長が増大するという負の側面も有している。

今回の成果により,磁場とレーザーを組み合わせた新しい核融合方式の発展が期待される。具体的には,強磁場によって熱,電子及びイオンがレーザー核融合プラズマ中を閉じ込め,それらのエネルギーの損失を低減することで,効率的な点火が実現出来る可能性がある。これまでの理論・シミュレーションによる研究に,新たに実験が加わることで研究が大きく進展するという。

また,宇宙プラズマにおいて,磁場とプラズマの相互作用は重要となる。磁場中でのプラズマの不安定性,磁気リコネクションによる磁場構造の変化と高エネルギー粒子の発生,X線のスペクトルに見られる特異な構造等の解明に,今回の研究で開発された実験手法及びシミュレーションが貢献できるという。

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