日・ルーマニア、ハイパワー光学拠点整備へ レーザー核融合を後押し

著者: オプトロニクス 編集部

大阪大学レーザー科学研究所(阪大レーザー研)とオカモトオプティクス、ルーマニア極限レーザー核物理研究所(ELI-NP)は、高性能光学素子(オプティクス)の研究開発や製造を行なう施設「ハイパワーオプティクスセンター」を共同で設立した。

(図)ハイパワーオプティクスセンター計画図(提供:大阪大学レーザー科学研究所、ルーマニアELI-NP)

2027年に稼働開始予定の同センターは、レーザー核融合を実現するパワーレーザー装置に必要不可欠な、高性能で損傷しにくい新しいオプティクスの研究開発および生産を行なう拠点となる。

光技術はその進展に伴い、産業や社会に大きな変革をもたらしてきた。特に、先端的な光技術を集結したパワーレーザーは、レーザー核融合や宇宙デブリの除去などに利用される複合技術であり、世界各国で開発が進められている。

阪大レーザー研は、パワーレーザーに関する国際研究拠点であり、世界有数のパワーレーザーを独自に開発し、レーザー核融合をはじめとする様々な国際研究を行なっている。

一方、ルーマニア極限レーザー核物理研究所(ELI-NP)では、世界有数のパワーレーザー装置が稼働している。阪大レーザー研は、2017年にELI-NPと部局間協定を締結するとともに、連携オフィスを相互に設置するなど、研究協力を進めてきた。

「ハイパワーオプティクスセンター」設立の経緯と目的

より高性能のパワーレーザー装置を実現するためには、使用されているオプティクスの損傷・消耗が喫緊の課題とされている。そこで、より高性能で高耐久性なオプティクスの研究開発を行なう拠点の設置が求められていた。2023年3月7日には、岸田内閣総理大臣(当時)および訪日中のヨハニス・ルーマニア大統領(当時)の立会いのもと、首相官邸において協力覚書交換式が行なわれた。

このセンターの設立には、阪大レーザー研でも使用されているオプティクスを製造したオカモトオプティクスが参画し、阪大レーザー研・オカモトオプティクス・ルーマニアELI-NPの三者によって運営される。また、阪大レーザー研、ELI-NPのみならず、世界のパワーレーザー施設に先端的なオプティクスを供給する、新たな国際的サプライチェーンの構築も目指すとしている。

「ハイパワーオプティクスセンター」の詳細

ハイパワーオプティクスセンターは、ルーマニア・マグレレ市のELI-NPに隣接して建設される。地上2階建て、総床面積約2000m2の同センターには、クリーンルーム設備や様々な研磨装置、コーティング装置が導入され、オプティクスの開発・生産を行なう一大拠点となる。整備費用はおよそ60億円で、ルーマニア政府より支出される。

波及効果

ハイパワーオプティクスセンターにおいて、より高性能で損傷しにくいオプティクスを開発することで、冷却に関する技術的問題から、数時間に1回しかレーザーを出力することができなかった従来のパワーレーザーに対し、その性能を飛躍的に向上することができるとしている。

阪大レーザー研では、熱を除去しやすい素材を用いたり、冷却方法を工夫することで、1秒間に100回のレーザーを出力できる新しいパワーレーザー:SENJU(Super Energetic Joint Unit)を開発した。ハイパワーオプティクスセンターで開発する高性能オプティクスは、SENJUのさらなる高性能化・小型化・安価化につながるという。

さらに、複数のSENJUを結合することで、世界でも類を見ない高平均出力レーザーを構築する計画(文部科学省の学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想 ロードマップ2023)であり、レーザー核融合の実現を強力に加速することが期待されている。

2025年12月3日には同センターの起工式記念式典が開催された。(写真)ミルチャ・アブルデアン上院議長(左)、アッティラ=ゾルターン・チェケ大臣(右)
(写真)阪大レーザー研 兒玉所長(左)、オカモトオプティクス 岡本代表取締役社長(右)(提供:大阪大学レーザー科学研究所、ルーマニアELI-NP)
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