パワー半導体とイメージンセンサーの両輪で挑んだ日本市場の一年とは

著者: admin

生き馬の目を抜く半導体業界において,パワー半導体とイメージセンサーに注力するオンセミは成長著しく,その戦略と動向が注目される一社だ。我々は昨年9月に日本法人代表取締役の林孝浩氏に話を伺っている。コロナ禍から産業が再始動したこの一年,同社はどのようにニーズに応えてきたのか,また日本市場をどう捉えてきたのか,再び林氏にインタビューした。

─経営概況を教えてください

我々の2022年12月末の売上は83億ドル,前年比24%増と力強い伸びを示しました。2023年度第一四半期の売上は19億6,000万ドルで,車載のビジネスが約38%と大きく伸び,全体の50%を占めるようになっています。ここにインダストリアルを足すと79%となます。約2年前にCEOのHassane(Hassane El-Khoury氏)が就任時にこの2つの市場の売上を5年間で75%にすると目標に掲げましたが,約2年半で達成したことになります。我々は引き続きこの2つの市場に重点的に投資を行なっていきます。

我々は,エネルギーインフラ,給電,FA,5Gクラウド,自動運転の機能安全,EVの6つの産業分野が今後5年間(2022~27年)非常に大きな伸びを示すと考えており,これらの分野にリソース投資を進めていきます。EVや電動化が盛り上がっても,例えば給電などのエネルギーインフラ,いわゆるエコシステムが伸びなければEV化社会は実現しません。我々は6つの領域を1つのくくり,我々のエコシステムとして捉えています。

売上の市場別・地域別割合(提供:オンセミ)

このうち自動車関連(自動運転の機能安全,EV)では5年間に19%,インダストリアル(エネルギーインフラ,給電,FA)は10%のCAGRを目指します。その他は-4%と,5Gクラウド以外は下がっていますが,これらの分野には投資していないためです。徹底的に投資している自動車関連とインダストリアルを合わせ,今後5年間は10~12%の成長が我々のターゲットとになります。

各分野の目標CAGR(提供:オンセミ)

-製品ポートフォリオとしてはどこに注力しますか?

引き続き我々は2つの領域,SiCやSiパワー半導体による「インテリジェント・パワー」と,イメージセンサーによる「インテリジェント・センシング」に特化していきます。パワー半導体は9%と,現時点でナンバー2のシェアを持っています。我々の戦略的な領域ですので,38%のCAGRを目指す中で大きく拡大していきます。

5年間の成長戦略(提供:オンセミ)

半導体について我々は過去に3つのインフェクションポイント(変曲点)があったと考えています。まずPC,次がスマートフォン,そしてデータセンターの誕生です。そしてパワー半導体,特にSiCの領域が第四のインフェクションポイントと言われていて,今後2022年~2030年の間に33%のCAGRを予測しています。この領域に我々徹底的に投資し,リソースかけてビジネスをとっていきます。もちろんネットゼロのように,社会課題にも貢献できる分野としても注目しています。

関連記事

  • バッテリーフリーが当たり前の時代へ ― 光無線給電の有効性

    電力供給ラインを無線化するとバッテリー、給電ケーブル、コンセントが不要になる、既成概念を覆し新しい世界を作る可能性を秘めた光無線給電が注目を集めている。その普及と実現化に向けて研究している宮本氏に話を聞いた。 -光無線給 […]

    2025.10.16
  • 注目のパワーレーザー―日本の戦略と研究開発の行方

    大阪大学レーザー科学研究所でパワーレーザー研究を先導する兒玉了祐先生に,その定義や技術の進展,国家戦略から若手へのメッセージまで幅広く語っていただいた。現在、パワーレーザーは核融合や宇宙,材料開発など,社会課題の解決に直 […]

    2025.10.16
  • レーザー核融合の半世紀-浜松ホトニクスが描く「10kJ・10Hz」へのロードマップ

    1970年代のストリークカメラ開発から始まった同社のレーザー核融合との縁。大阪大学レーザー科学研究所との共同研究,200–300J級・10Hz動作を実証した近年の進展,そして2028年~2040年を見据えたロードマップま […]

    2025.10.16
  • レーザーを使いこなし,品質保証に繋げる加工プロセス開発が重要

    ◆白井秀彰(シライ ヒデアキ) ㈱デンソー 先進プロセス研究部 機能創成研究2室 担当次長/工学博士(大阪大学) 【経歴】1969年生まれ。日本電装㈱(現 ㈱デンソー)入社後,生産技術開発部門に配属し,一貫して接合分野に […]

    2024.08.12
  • 人を大切にし,働きやすい会社を目指して

    光とレーザーの専門商社として,最先端の海外製品・技術を日本市場に展開し,その企業価値を高めてきた日本レーザー。 光業界を取り巻く環境も随分と変化してきた中にあって,直面している課題や今後の展望などについて,社長の宇塚達也 […]

    2024.07.10
  • 光プラスαの技術で水中ビジネスを加速させる!

    光・レーザー関連機器開発を手掛けるトリマティスが2024年に設立20周年を迎えた。 代表を務めているのは島田雄史氏だが,2004年に島田氏を含む3名で起業したのが始まりだったという。会社名はその3を意味するtriと光の三 […]

    2024.03.12
  • 学術と産業の架け橋となり,更なるイノベーション創出を

    ◆久間和生(キュウマ カズオ) (一社)レーザー学会 会長 【経歴】1977年:東京工業大学大学院 博士課程電子物理工学専攻修了(工学博士),同年三菱電機株式会社入社。 中央研究所配属,人工網膜チップ等の研究開発と事業化 […]

    2024.01.15
  • 芽から幹への成長が期待される面発光レーザーの産業化

    ◆伊賀健一(イガ ケンイチ) 東京工業大学 栄誉教授/元学長 広島県呉市出身。 1959年広島大学附属高校卒。1963年東京工業大学理工学部卒。1968年同大学院博士課程修了(工学博士)。 東京工業大学教授,同図書館長, […]

    2023.12.07
  • 日本が実用化の先導役となるか!?注目のペロブスカイト太陽電池開発動向

    ◆宮坂 力(ミヤサカ ツトム) 桐蔭横浜大学 医用工学部 特任教授 1981年東京大学大学院工学系研究科修了(工学博士)。 富士写真フイルム㈱足柄研究所主任研究員を経て2001年より桐蔭横浜大学大学院工学研究科教授。 2 […]

    2023.10.06
  • オプトキャリア