パワー半導体とイメージンセンサーの両輪で挑んだ日本市場の一年とは

-安定供給について施策はあるのでしょうか?

そもそも半導体製造装置の供給自体がここ1~2年,コロナによって困難でしたが,ようやく改善されてきました。パワー半導体もセンサーも一部のテクノロジーに関しては相変わらずタイトな状況が続いていますが,それでも2年前と比べると全体的には落ち着いてきています。もちろん半導体製造装置は導入すればすぐに製造できるものではなくタイムラグがありますが,受注残も一部のテクノロジーを除いて順次改善しています。

また,我々は世界中にあるサブスケールのファブを統廃合し,メガスケールに徹底的に投資して拡大しています。日本では新潟工場を売却しましたが,会津工場は戦略的に投資をし続けます。ニューヨークのイーストフィッシュキル工場も拡大し,パワー半導体もイメージセンサーも12インチファブとして今後投資を進め,効率よく生産することでアウトレットだけでなく,将来的なコストの改善や競争力を高めていけると考えています。

我々は,LTSA(Long Term Supply Agreement)という長期の供給契約をお客様と結んでいます。この2年間のような供給問題を起こさないためにも長期にわたる供給契約を結ぶことでお客様にも安心してもらえますし,我々も非常に計画が立てやすいので,堅牢なサプライチェーンを作っていけます。さらにはこの枠組みの中で新しいテクノロジーについて話すなど,お互いに将来にわたるビジネスを広げていくものになっています。具体的には2023年第一四半期の終わった時点で,ワールドワイドで170億ドルのLTSAを結んでいます。SiCで90憶ドル,残りの80億ドルがセンサーなど他のシリコン系となっています。お客様から信頼を得て,将来に渡ってのビジネスやサプライにエンゲージメントができていることが,この数字に表れています。

─社長就任から一年経ち,日本市場に対する所感は如何でしょうか

激動の一年でしたが,日本のお客様からの非常に強い要望から,我々が貢献できる範疇・範囲というのがどんどん広がっていると感じています。コロナ後に製造やマーケットが大きく改善する中で,我々の事業も伸びてきています。特に車載関係では,EV系だけではなくエンジン系でも大きな問い合わせや商談をいただいています。自動車メーカー各社は,22~23年の生産台数の伸びが対前年比数%~数10%伸びるという見立てもあるので,我々もそれに合わせて戦略を立てています。

他にも,これまで半導体メーカーと直接付き合いが無かったお客様からも色々なお話をいただいており,半導体に対する社会の要求や今後への期待が非常に大きいと感じています。地域別の売上げでは日本は8%ですが,これはあくまで国内で購入があった数字です。日本で設計し,中国やアジアの工場に出荷された分はアジアの51%の数字に含まれているので,実際の売上はそれ以上となっています。さらに最先端という意味でも日本は非常に重要なマーケットです。この一年間は,アメリカの本社側からの戦略的な日本に対する期待度,日本のお客様とのエンゲージメントの重要さを感じた一年でした。今年もそれをどんどん広げて,日本のお客様や日本の社会に貢献したいと思っています。

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