イメージセンサとパワー半導体で変換点の日本市場に挑む

─医療分野はどうでしょうか?

まだ具体的な話ができる状況ではありませんが,診断のようなところにイメージセンサの使用をご検討いただいており,今後伸びていく可能性のある分野だと思っています。現在量産のような事例はありませんが,日本だけでも数社とそういった話はさせていただいています。具体的な話はこれからですが,イメージセンサは様々な分野で応用の可能性が高く,自動車はもちろんインダストリアル,メディカル,インフラ関係,そういったところで人の眼に代わって,無限に応用事例はあると思います。

─日本の事業体制について教えてください

申しました通り,国内従業員約1,600人のうち,7割が製造部門です。工場が新潟と会津にあって,東京は本社兼セールスオフィスとなっています。会津工場に関しては拡張していく方針で現在投資をしています。会津工場では8インチのテクノロジーを用いて国内だけでなく,世界に向けた多種多様な,パワー半導体などを作っています。新潟工場※は車載品質の認定を受けた施設で,6インチのラインで様々な半導体製品を製造してきましたが,製造拠点を最適化し,高度に差別化されたパワー,アナログ,センサー製品への注力を強化するという計画の一環として,2020年に売却の検討を進めていることを発表しています。交渉が成立して正式に売却が決まれば,新潟工場の従業員も新しい会社に移ることになります。新潟と会津ではテクノロジーが異なるので,一概に集約とは言えませんが,日本の経営資源は会津工場に投資していくことになります。

※新潟工場は2011年に三洋半導体より買収した
─日本国内市場をどう評価していますか?

日本についてオートモーティブとインダストリアルの分野に限ってについてお話させていただくと,現在大きな変換点,EVやADAS,自動運転といった流れが起きていますので,今まで我々のパワー半導体が自動車1台に1個しか載らなかったのが,ハイブリッド化やEV化に伴って5個,10個と数が増えていきます。またイメージセンサも,先ほど言いましたように,車外だけでなく車内の監視もありますので同様に増えていきます。車の生産台数が1.1倍になったとしたら我々のビジネスも1.1倍ではなく,そこから何倍も伸びていくと考えると,日本のマーケットとは我々にとって非常に重要です。

日本自動車メーカーも2030年のガソリン車の新車販売終了に向けEVの生産を増やそうとしていますし,これはティア1も海外を含めて同じで,既にそういう注文もあります。車一台当たりに搭載される半導体の個数も変わってくるとともに,限りなくマーケットは広がっていきます。我々のCEOも分野をフォーカスし,さらに良い製品を作っていこうと考えており,この5年, 10年でこの分野が伸びなくなることを考える方が難しいと思っています。

加えてインダストリアルも,日本には非常に大きな世界的シェアを持つワールドリーディングカンパニーがたくさんあります。インダストリアルとオートモーティブで排出される温暖化ガスの約6割を占めるとも言われていますので,こうしたお客様と地球温暖化防止に向けた動きというのは,国や世界を上げての課題となります。そこに我々の高効率のパワー半導体を入れることで貢献できますし,ビジネスの需要もどんどん広がっていくと考えています。イメージセンサもファクトリーオートメーションの眼となって今後さらに伸びていく,そう考えると,こちらも今後需要が減る可能性を考える方が難しいくらいです(笑)。

(月刊OPTRONICS 2022年09月号)

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