産総研・天野建氏に聞く AI社会で省電力化の鍵を握る光電融合技術

─産総研のパッケージの特徴を教えてください

産総研のパッケージの大きな特徴は、光電変換機能をすべてパッケージ内に組み込んでいる点です。光電変換は計算ではなく通信(Off-chip I/O)に関わる部分であり、GPUやHBMといった計算チップ間のデータ伝送を担います。そのため、通信を担う光電変換をパッケージ基板に直接集約することで、電気配線との整合性が高まり、効率的なチップ間接続が可能になるという考え方に基づいています。

産総研のパッケージは、半導体チップを効率的に実装できる点が特長です。たとえばTSMCのシリコンインターポーザーのように多数のチップを搭載した構造でも、そのパッケージ上に置けば光化への対応が容易になります。また、検査がしやすいことに加え、チップ直下に光電変換チップを配置しているため、光の伝送にはポリマー導波路を用いて効率的な引き回しを実現しています。

光は位置合わせが非常に難しいため、産総研ではファンアウトパッケージ技術を用い、リソグラフィーによって光接続を実現しています。従来のピックアンドプレース方式では物理的なズレが生じやすいのに対し、露光技術なら半導体で培われたナノレベルの重ね合わせ精度が得られるため、高精度な接続が可能になります。さらに、ミラー技術やポリマー導波路の研究、パッケージング技術、光接続部品や製造技術、そして光電融合における検査技術まで幅広く取り組んでいます。

─産総研が考える光電融合とNVIDIA やBroadcomとのコンセプトや構造の違いを教えてください

TSMCはトランシーバーチップCOUPE(COmpact Universal Photonic Engine)やシリコン構造を基板上に実装する研究、BroadcomはSCIP(Silicon Photonics Chiplets In Package)構造を用いた光電融合チップの研究を進めています。それに対し、私たちの特徴はフォトニクスを直接パッケージに組み込む点にあります。特に日本はパッケージ技術に強みを持ち、基板ではレゾナック、回路基板では新光電気工業、イビデン、京セラ、さらに材料では味の素のABFのように,世界的に高い技術力を維持しています。そのため、私たちは日本の得意分野であるパッケージ技術にこだわり、光電融合の差別化を図っています。

─天野先生が大切にしている研究姿勢や理念を教えてください

センターは研究所である以上、常にチャレンジする姿勢を重視しています。テレコム分野にとどまった企業は買収などで厳しい状況にある一方、データコムに挑戦した三菱電機やフジクラは、データセンター向け技術で大きな成果を上げています。このことからも、現状に安住せず挑戦を続けなければ技術はすぐに陳腐化してしまうと考えています。日々、どうチャレンジを促すかは悩ましい課題ですが、最も大切にしている点でもあります。もはや、光電融合をやらないという選択肢はなく、産総研の技術が活用されることを期待しながら研究開発を進めています。同時に、周囲の皆さんにも積極的に働きかけを行なっています。

─趣味やお休みの過ごし方を教えてください

以前は山登りやスキーが好きでしたが、子どもができてからはなかなか行けていません。代わりに地域の子ども関係の活動に関わっており、子どもの小学校の親父会では,コロナで中断していたお祭りを、有志と一昨年から再開しました。今年もボランティアで焼きそばを焼きました。

(月刊OPTRONICS 2025年11月号 Human Focus「AI社会で省電力化の鍵を握る光電融合技術」)

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