ミニインタビュー

原田先生に聞く
酸化物薄膜に託す,次世代半導体配線への可能性
─今回の研究を始めたきっかけを教えてください
電気がよく流れるバルク結晶を薄膜にしたら面白いのではないかと思ったことがきっかけです。
最初は,液体ヘリウム温度のような低温まで冷やしたときに現れる物性が面白いと思い,研究を始めました。ただ,実際に作製してみると,想像していた以上に安定な物質であることが分かりました。それに加え,さまざまな特徴を持っていることから,もしかすると応用先があるのではないかと直感的に感じたのです。
─この研究の面白さはどのようなところにありますか
電気を流す酸化物の中でも,非常に高い導電性を示す点が面白いところです。
また,導電性,仕事関数,高耐久性といった特徴が,いずれも結晶構造と深く関わっている点も興味深いです。見た目の結晶構造の特徴が,そのまま物性として表れているところに,この物質ならではの魅力を感じています。
─研究を進める中で,苦労していることはありますか
私は楽天的な性格なので,あまり「苦労している」と感じることはないかもしれません。
一方で,社会情勢の影響による難しさはあります。特に,貴金属系の材料費は高騰しています。また,実験装置には輸入品が多く,円安の影響を受けやすいです。10年前と比べると,感覚的には1.5倍ほどの価格になっている印象もあります。
─どのように応用されることを期待しますか
一つは,半導体分野,とくに微細配線への応用です。現在,コンピュータに使われるチップの中では,配線材料として銅が使われています。しかし,配線の幅が十ナノメートル程度まで細くなってくると,さまざまな理由から銅を使うことが難しくなってきます。
そこで,銅に代わる材料が探索される中,最近では,この物質が代替材料としてかなり有望なのではないかと言われるようになってきました。現在では,海外でもこの材料を研究する人が増えています。
─若手研究者が置かれている状況について
若手研究者は,数年間の任期の中で成果を出し,次のポジションを獲得しなければならない状況にあると思います。また,ライフステージが変化していく中で研究を続けるのは,時間的にも大変な部分があると思います。
以前,上司から「君が人生の一部を使う意味がある研究なら,やってもよい」と言われたことがあります。その言葉もあり,後追いの研究で年月を費やしてよいのか,常に考えています。
─若手や学生に向けてメッセージをお願いします
最近は「タイパ」という言葉をよく耳にします。研究は,まさにタイパが悪いものです。失敗が大半ですから。
しかし,その中から面白いものが生まれることがあります。一見すると効率が悪そうなことでも,やってみると意外と面白いことがある。むしろ,タイパを意識するのであれば,最初に何をやるべきかをよく考えることが大事だと思います。お互い頑張りましょう。
(聞き手:望月あゆ子)
はらだ たかゆき
所属:物質・材料研究機構 ナノアーキテクトニクス研究センター 主幹研究員
2011年東京大学博士(工学)。同大物性研究所特任研究員,マックスプランク固体研究所ポスドク,東北大学金属材料研究所助教を経て,2021年より物質・材料研究機構にて薄膜ヘテロ構造の研究に従事。2020年よりJSTさきがけ研究者兼任。本稿の材料の研究に関して,令和5年度文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞。
趣味:運動(休日はサッカーの試合に参加)
(月刊OPTRONICS 2026年7月号)



