京都大学・教授の原田博司氏らの研究グループは、60GHz帯のミリ波を用いたソフトウェア無線技術を開発し、走行中の車両から最大10.3Gbit/sの高速無線伝送に成功した。さらに、車両の位置の推定を超高速無線通信と位置センシングを同時に行う実証にも成功した。

図 60 GHz帯超広帯域移動伝送装置((a)送信機、(b)受信機、(c)受信機から⾒た移動経路)
次世代の移動通信システム「6G」時代では、点群データや高精度な3次元地図など自動運転に必要な大容量の認識情報と高速通信を扱う。自動運転分野では無線に接続して情報共有をするシステムV2Xが注目されており、交通分野における課題解決に貢献することから、国内でもミリ波帯を用いた研究開発が進められている。
一方、自動運転が発展することによってデータが増大し、瞬時にデータを収集するための高速で大容量な通信技術が求められている。さらに、車両の測位には全衛星測位システムのGNSSが広く使われているが、高層ビルが並ぶ都市部などでは精度が大きく低下する場合がある。
こうした課題を解決するための技術として、通信とセンシングの融合技術であるISACが注目されている。研究グループが利用した60GHz帯は、広帯域を確保できる点が特徴である。そこで、5Gの標準仕様を基盤に、国内の5Gで利用される最大チャネル帯域幅400MHzの約5倍に相当する1840MHzの広帯域化を実現する伝送試験装置を開発した。
装置には、信号処理機能を正確に同期して復調するソフトウェア無線技術を採用した。周波数にデータを分割し、並列に伝送するOFDMA方式に準拠し、サブキャリア感覚を最大120kHzから960kHzへ拡張することで広帯域化した。さらに、車両位置の推定や、60 GHz 帯の通信⽤電波を利⽤したセンシング⽤信号処理機構を実装した。

図 開発した6G向け60 GHz帯超広帯域移動伝送試験装置((a)送信装置、(b)受信装置)
実験は、交差点から直線状に約330m延びる道路で実施。車両を約18km/hで走行させ、道路を見通す建物内の高さ約5.8mに受信機を設置し、受信アンテナの向きは車両に追従させず固定した。この条件で、交差点から約150mの範囲まで10.3Gbit/sの伝送を確認した。また、変調符号化⽅式であるMCSでは、約250mの範囲まで通信を確認したという。

図 実験環境および諸元。(a)実験環境写真、(b)受信機位置、受信ビーム照準点、送信⾞両移動経路 (c)実験諸元

図(a)MCS7(QPSK、3.4 Gbit/s)の伝送特性(b)MCS 17(64QAM、10.3 Gbit/s)の伝送特性。 図の同⼼円は、交差点中⼼からの距離を表す。
受信した通信信号から推定したドップラー周波数を用いて、通信信号を読み出す際に推定する周波数変化から車両速度を求め、推定した⾞両速度を参照位置から積算して⾞両位置を推定した。その結果、速度の誤差は最大約5km/h、位置の平均誤差は約3mだったとしている。実験で使用した伝送試験装置により、実際の⾞両⾛⾏環境において、 60 GHz 帯の同⼀の無線信号を⽤いた10 Gbit/s超の⾼速通信と⾞両速度と位置センシングを同時に実現できることを確認した。

図 通信電波を⽤いたセンシング結果((a) ⾞両速度の推定結果、(b)⾞両位置の推定結果)
今回の成果は、受信信号処理技術を適用することで、高速無線伝送を実現すると同時に、必要な車両位置も通信電波から利用できる可能性を示すものだ。研究グループは今後、通信と車両センシングを一体化し、6G時代の安全な自動運転を支える次世代無線通信インフラの研究開発につなげるとしている。





