理化学研究所(理研)の研究チームは、アト秒レーザーを460nm×360nmまで集光することに成功した。高精度な楕円面多層膜ミラーと焦点位置安定化技術を組み合わせることで、サブミクロン領域への集光と3.0×10¹⁵W/cm²のピーク強度を実現した(ニュースリリース)。

アト秒レーザーは、10⁻¹⁸秒という極めて短い時間幅を持つ光で、原子や分子、固体中を高速で動く電子の挙動を調べる手段として利用されている。研究チームはこれまで、パルス幅226アト秒、ピーク出力1.1GWのテーブルトップ型アト秒レーザーを開発している。

今回、アト秒レーザーをより小さな領域へ集光して光強度を高めるため、高精度な楕円面多層膜ミラーを用いた集光光学系を構築した。

アト秒レーザーをサブミクロン領域まで集光するには、ミラー表面のわずかな形状誤差が波面を乱し、集光スポットを広げる要因となる。研究チームは波動光学シミュレーションを行ない、局所的な高さのずれを数nm以下に抑える必要があることを確認した。
製作した楕円面ミラー基板では、1mm四方の領域における設計形状からのずれを二乗平均平方根で0.892nmまで抑えた。さらに、約60eVの極端紫外光を効率よく反射するモリブデン/シリコン多層膜を形成した。
この楕円面多層膜ミラーをアト秒レーザーのビームラインに組み込み、約4m上流で発生したレーザーを反射・集光した。集光スポットはナイフエッジ法によって評価した。
一方、サブミクロン領域では、わずかな焦点位置の揺らぎも測定精度に影響する。このため、実際の集光点とは別の光学的に対応する位置に焦点像を形成し、その位置をリアルタイムで監視して集光点をフィードバック制御する安定化システムを構築した。
その結果、集光スポットの半値全幅は水平方向460±130nm、鉛直方向360±120nmとなった。得られた集光サイズは回折限界に近い値だったという。

焦点に到達したパルスエネルギーとパルス幅から算出したピーク強度は3.0×10¹⁵W/cm²となった。研究チームでは、ビーム転送時の損失を低減することで、さらに高いピーク強度を得られる可能性があるとしている。
今後、ピーク強度をさらに高めることで、これまで主に気体を対象としてきたアト秒非線形光学を、固体など幅広い物質へ展開することが期待される。
また、一方のアト秒パルスで電子状態を変化させ、時間をずらした別のパルスでその変化を観測する「アト秒ポンプ・アト秒プローブ計測」への応用も想定されている。さらに、極めて短い時間と微小領域にエネルギーを集中できる特徴を生かし、材料表面の微細加工などへの応用も期待される。




