千葉大学、NHK放送技術研究所、京都大学は、一つの素子で発光と太陽光発電の機能を併せ持つ発電できる有機EL素子の開発に成功した(ニュースリリース)。
これまで、有機半導体を用いたデバイスにおいて、発光と発電は逆過程であるため、これらを高い次元で両立することは困難とされていた。
研究グループは、高い発光効率と強い光吸収を併せ持つMR-TADF材料を発電における電子供給材料に用い、MR-TADF材料と電子受容材料(アクセプター)の界面における電荷や励起子の挙動を精密に制御することで、高い外部量子効率(EQEEL)と電力変換効率(PCEPV)の両立に成功した。
今回開発した素子は、発光と発電のトレードオフを克服し世界最高値を同時に達成するとともに、様々な発光色を示す多機能素子が実現できることを実証した。

今回の研究の鍵となったのは、MR-TADF材料とアクセプターの界面で形成される電荷移動(CT)励起子 の精密な制御。一般に有機半導体デバイスでは、プラスとマイナスの電荷が強く引き合う力(Eb)が大きいため、電荷を分離させて電気を取り出す際に大きなエネルギーロスが生じることが課題だった。
今回の研究では、MR-TADF材料を用いることで、このCT励起子のEbが0.01eVから0.4eVという、従来の有機材料系に比べて小さな値となることを明らかにした。さらに、このEbの大きさが発光色を決定づける重要な因子であることも解明した。具体的には、Ebが大きい分子の組み合わせでは、CT励起子に由来する長波長発光が得られ、逆にEbが小さい組み合わせではMR-TADF材料からの短波長発光が得られる。

この性質を利用してEbを精密に制御することで、青色から赤色、白色に至る全可視光領域での動作を実現した。
緑色および橙色の発光発電素子において、8.5%を超えるEQEELと約0.5%のPCEPVを同時に達成した。緑色発光材料の発光効率と光が素子の外に出る割合を考慮すると、8.5%という数値は、電気的なロスがほぼゼロで、理論上の限界値に近い性能を引き出せていることを示している。
また、実現が困難とされていた青色発光の多機能素子においても、約2%のEQEELと1%を超えるPCEPVを実現した。青色発光する多機能素子の実現は世界初の成果となっている。
研究グループは、この成果により、ディスプレーの消費電力削減や、外部電源を必要としないセンサー・情報セキュリティデバイスなどへの応用が期待されるとしている。



