量子科学技術研究開発機構(QST)は、軟X線パルスレーザー光源を開発し、酸素K吸収端 (540eV)という世界最高エネルギー領域において、電子状態を選別した分光計測を初めて実現した(ニュースリリース)。

光合成や太陽電池、光触媒などの光化学反応は、光によって励起された電子の動きによって機能するが、その電子の挙動を直接観測するにはアト秒(10-18秒)オーダーの閃光が必要。これまでのアト秒パルス技術は極紫外領域に限られており、酸素原子などの計測には不十分だった。
酸素K吸収端までの軟X線発生とその分光応用を目指し、研究グループは、中心波長2000nm、パルスエネルギー1.32mJ、パルス幅19.5フェムト秒、繰り返し周波数5kHzの出力を持つ光パラメトリックチャープパルス増幅器の開発に成功した。
この増幅器は、研究所が独自に開発したイッテルビウム添加イットリウムアルミニウムガーネット(Yb:YAG)を用いた100Wクラスの高出力レーザーを励起光源として利用している。
従来の軟X線HHGに用いられているレーザー光源と比較して、5倍程度高い繰返し周波数を実現した。軟X線の光量は繰返し周波数に比例して増えるため、高繰返し・高出力の増幅器は、酸素K吸収端におけるX線吸収の高精度な測定に重要な技術要素となっている。
開発した赤外レーザー光源を用いてHHGを行なった結果、酸素K吸収端(540eV)を超える約620eVまで軟X線スペクトルを拡張することに成功した。さらに、この軟X線光源を用いて、炭素、窒素、酸素のK吸収端およびチタンのL吸収端近傍の微細構造の計測にも成功している。これは、レーザーを用いたコヒーレント軟X線光源によって、水の窓全域でX線吸収端近傍構造の計測を世界で初めて実現した成果となっている。
研究グループは、今回の成果により、水分子や酸化チタンなどに含まれる酸素原子内の電子の静止画撮像が可能となり、光照射直後の超高速反応過程の解明に道を開くとしている。



