情報通信研究機構(NICT)を中心とした国際共同研究グループは、国際標準に準拠したカットオフシフト光ファイバーの伝送容量を拡大する新しい伝送技術により、毎秒430テラビットの伝送実験に成功した(ニュースリリース)。
同社はこれまで、商用の長距離光ファイバー伝送システムで一般的に利用されるC帯及びL帯の波長帯に加え、今後の利用が期待されるS帯やE帯などの波長帯を活用できるシステムを開発し、大容量伝送の実証に成功してきた。
さらに、より大きな伝送容量を実現するため、O帯やU帯の利用にも取り組み、波長帯の拡大を進めている。しかし、既存の光ファイバーにおける低損失で利用可能な波長帯には限界があり、更なる伝送容量の拡大には、新しい光ファイバー伝送技術の開発が不可欠であった。
今回、国際標準に準拠したカットオフシフト光ファイバーにおいて、長距離光ファイバー伝送システムで利用されるC帯やL帯より短波長のO帯でマルチモード(3モード)伝送が可能であることを世界で初めて実証し、O帯の伝送容量を従来比で約3倍に拡大した。
さらに、O帯での3モード伝送とE帯、S帯、C帯、L帯の単一モード伝送を組み合わせるため、カットオフシフト光ファイバーを用いた広帯域WDM対応の単一モード・マルチモード統合光伝送システムを開発した。
3モード伝送が可能なO帯に209波長、単一モード伝送のE帯、S帯、C帯、L帯に706波長を配置し、総周波数帯域幅30.1テラヘルツに及ぶ広帯域WDM光信号を生成。偏波多重のQPSK、16QAM、64QAM、256QAM方式を用いることで高いビットレートを実現した。

この光信号をカットオフシフト光ファイバーで10km伝送し、受信した光信号から理想的な誤り訂正符号の適用を仮定して推定したデータレートは毎秒430.2テラビットに達し、国際標準準拠の光ファイバ―における伝送容量の世界記録を達成した。
カットオフシフト光ファイバーは国際電気通信連合 電気通信標準化部門(ITU-T)で策定された国際標準のITU-T G.654光ファイバで、超低損失と大きな有効断面積という特長を備え、海底ケーブル伝送等の長距離伝送に対応するよう設計されている。
2016年以降、この標準の派生仕様が導入され、陸上光ファイバネットワークへの適用が進められている。近年では陸上光ファイバネットワークに対応する仕様の光ファイバーも策定され、都市圏ネットワーク、データセンタ間ネットワークなどへの導入が拡大している。
また、一般的に使用される誤り訂正符号の場合のデータレートは、毎秒398.6テラビットとなった。マルチモード伝送技術によって、より少ない波長数・狭い周波数帯域で大容量伝送が可能で、既存の光ファイバーケーブルを増設することなく伝送容量を拡大できる経済的な手法であるという。
今後、Beyond 5G以降の光通信インフラを支えるため、NICTは超大容量を実現する革新的な光ファイバー伝送技術の研究開発を継続的に推進し、超大容量光伝送システムの伝送距離を拡大していくとしている。




