情報通信研究機構(NICT)は,単一光子間の和周波発生を用いた量子もつれ交換の実証に成功した(ニュースリリース)。
量子通信や量子計算のような量子情報処理分野では,2つの量子ビット間でのゲート操作が重要な基盤技術となる。光子を用いた実装においては,従来は2つの光子間の量子干渉(二光子干渉)が利用されてきた。
この方法では,通常の半透鏡と光子検出器で簡便に実験系を構築できる反面,量子もつれ交換によって得られた光子対の存在を測定によって破壊しなければ,忠実度が低くなってしまい応用の幅が制限されていた。
そこで,二光子干渉ではなく,単一光子間の和周波発生を用いた量子もつれ交換が理論提案されている。この方法では,単一光子間の和周波発生で生成された光子(和周波光子)を測定することで,最終的に得られた量子もつれ光子対を測定によって破壊することなく,高い忠実度で量子もつれ交換を実現することが可能になる。
この特長は,ループホールのないベル不等式破れの検証や,次世代量子鍵配送の長距離化に向けて大きなメリットとなる。しかし,このような単一光子間の和周波発生は2014年に初めて報告されたものの,当時検出された信号は非常に小さく,ほとんどノイズに埋もれていたため,量子もつれ交換へ適用するには検出信号のSN比(所望信号とノイズの比率)を大幅に改善する必要があった。
今回の研究では,NICTの持つ最先端技術(高速量子もつれ光源,低ノイズ超伝導単一光子検出器,高効率非線形光学結晶)を組み合わせて実験系を構築した。
その結果,和周波光子の信号は高いSN比で検出され,終状態に強い量子もつれが存在していることを確認し(最大量子もつれ状態との忠実度の下限を推定すると0.770±0.076),世界で初めて単一光子間の和周波発生による量子もつれ交換の実証に成功した。
研究グループは,今回得られた結果は光量子情報処理における大きな一歩であるとともに,今後新たな非線形光学デバイスを開発する際の重要な指針となることが期待されるとしている。




