名古屋大学と横浜市立大学の研究グループは共同で,植物の葉と花を分化させる幹細胞組織「茎頂メリステム」を対象に,組織構造を維持したまま,1細胞解像度で3Dイメージングする免疫染色法を新たに開発した(ニュースリリース)。
茎頂メリステムは,植物地上部の起源となる,葉や花をつくる幹細胞組織で、茎頂メリステムの発生は,葉をつくる状態から花をつくる状態へ大きく転換する。これは適切な植物体を形成するために重要なため,茎頂メリステムの発生とその理解は,生物学,農学の観点で重要となる。
茎頂メリステムを1細胞解像度かつ三次元的に観察する方法として,これまでは蛍光タンパク質GFPなどを利用した形質転換体の観察が行なわれてきた。この手法は,発生に重要なタンパク質などの分布を解明するために画期的な方法だったが,形質転換体の作出が困難な場合や,タンパク質の化学修飾の可視化などは形質転換体の利用が難しい場合があった。
今回の研究で着目している免疫染色法は,形質転換体では観察できないタンパク質の化学修飾や細胞壁などを可視化させる手段として幅広く用いられている。しかし,次元的な情報が損なわれてしまう課題や,組織の内部まで染色が届かないという難点があった。
そこで研究グループは,茎頂メリステムを1細胞解像度かつ三次元的に撮影する免疫染色法を開発した。開発にあたり、試薬を組織の内側まで浸透させるために,高濃度の界面活性剤に浸すこと,そして茎頂メリステム以外の組織をできるだけ取り除くという処理を行なったという。そして3Dイメージングにおいて,染色後の茎頂メリステムを透明化試薬に浸すことにより組織の内側まで光が届き,表層と遜色なく蛍光を検出することができた。
開発した免疫染色法を用い,遺伝子発現の制御に関与するヒストン修飾の空間的な分布を解明した。遺伝子発現の活性化に関与する修飾は,茎頂メリステム全体で一様に分布が見られたが,抑制に関与する修飾は,茎頂メリステムのそれぞれの核で染色の程度が異なるパッチ状のパターンとなり,幹細胞が存在する茎頂メリステムの先端部分で蓄積が少なくなることが分かった。また抑制に関与する修飾は,茎頂メリステムが葉をつくる状態より花をつくる状態でより多く蓄積することを発見した。
この研究で開発した手法により,これまで観察が困難だったタンパク質の修飾状態を空間的に可視化できるようになった。さらに蛍光タンパク質を用いた形質転換体の観察と組み合わせることで,従来観察できていた目的のタンパク質と,ヒストン修飾をはじめとする修飾状態を同時に観察し,これらの位置関係を包括的に理解することに繋がるとしている。




