東京都市大学、東京大学、理化学研究所、キヤノンメディカルシステムズは、特定のバイオマーカーを感知して蛍光タンパク質を発現する皮膚を用いた「リビングセンサーディスプレー」を開発した(ニュースリリース)。

血糖値や炎症性物質などのバイオマーカーは、病気の予兆や進行度を知るうえで重要な指標。しかし、従来の測定法は採血が必要であり、頻回採血による負担やサンプルの迅速な処理が必要など、多くの課題があった。
また、ウェアラブルデバイスの発展により、汗や唾液などを利用した連続測定も進んでいるが、体表から離れた体内の微量シグナルを、高い選択性と感度で長期間捉えることは難しい状況だった。一方、生体内の細胞は、本来、化学物質や炎症シグナルを高感度かつ高選択的に検知し、分子シグナル経路を通じた遺伝子発現で応答する究極のセンサーとなっている。
また皮膚は、体表面積が大きく、表皮幹細胞が表面から0.1~0.3mmという浅い位置にあるため、その変化を外側から読み取りやすいという特徴がある。
研究グループは、体内で炎症が起きると蛍光を発する細胞から培養した皮膚を、マウスの皮膚に生着させた。このマウスに炎症性物質を投与したところ、移植部の蛍光強度が上昇し、体内の炎症状態を皮膚表面からの蛍光観察によって非侵襲的にモニタリングできることが示された。
また、このセンサー機能は、皮膚の新陳代謝を経ても常に維持されることが確認され、メンテナンスフリーで長期間の使用が可能であることが示唆された。
センサー機能を持つ人工皮膚は、次のようにして作った。まずヒト由来の表皮幹細胞に遺伝子を導入し、炎症性物質が結合しNF-κB(エヌエフカッパビー)経路が活性化されるとEGFPを発現する人工皮膚を作った。この人工皮膚は、炎症性物質の濃度に応じて、24時間以内にEGFPの発現により蛍光強度が増加すること、応答の範囲は0〜20ng/mLであることが分かった。
続いて、得られた人工皮膚を免疫不全マウスの背部皮膚に移植し、生着を観察した。4週間後の組織観察では、移植部位に周囲のマウス皮膚とは異なるヒト様の乳頭構造を伴う皮膚が形成されていることが分かった。移植部の面積は、移植後30日までは縮小するものの、その後200日以上にわたり大きさと位置がほぼ一定に保たれていた。

研究グループは、この成果は、将来的には、安全性・倫理性を含めた慎重な検討の上で、日々の生活の中で皮膚を見るだけで健康状態を確認できる、革新的な予防医療・健康管理技術への貢献が期待されるとしている。



