名工大ら,ホウ素化合物を可視光エネルギーで合成

著者: 編集部

名古屋工業大学と独アーヘン工科大学は,これまで過酷な反応条件を要していたポリフルオロアレーン類のC-F結合ホウ素化反応と比較的困難であったポリフルオロアリールホウ素化合物の鈴木・宮浦クロスカップリング反応の開発に成功し,画期的な新規合成戦略を提案した(ニュースリリース)。

炭素-炭素(C-C)結合は,天然物や医薬品などの機能性材料を構築する上で最も基本的な結合であり,その効率的な合成法の開発は有機合成化学の基盤技術。特に,パラジウム触媒を用いて有機ハロゲン化合物と有機ホウ素化合物を結合させる鈴木・宮浦クロスカップリング反応は,学術界から産業界まで広く利用され,2010年にはノーベル化学賞の対象にもなった。

このことからも,鈴木・宮浦クロスカップリング反応の出発原料となる有機ホウ素化合物の重要性は極めて高く,複雑な有機ホウ素化合物の合成可能かつ効率的な方法論の開発が求められている。

研究グループは,入手容易な2つの化成品から2工程で合成できるアミンホウ素ラジカル前駆体(ボラカルボン酸)とポリフルオロアレーンを光触媒とともに,可視光を照射することで,1つのフッ素(F)原子をホウ素に置き換えることに成功した。

これまで同様の分子変換を達成するには,高温条件や遷移金属を用いて強固なC-F結合を活性化する必要があったが,この手法では,可視光をエネルギー源として,室温下で迅速かつ高収率でポリフルオロアリールホウ素化合物を得ることが可能となっている。

さらに,様々な官能基を有する基質にも適用可能で,16個の新規アミンホウ素錯体を合成した。コントロール実験や密度汎関数理論(DFT)計算などの反応機構解析により,これまで活用例の少なかったアミンホウ素ラジカルの高い求核性が反応効率に影響を及ぼし得ることが示唆された。

合成したアミンホウ素錯体は,大気中でも安定で取り扱い容易な結晶であることも利点。この錯体を一般的な鈴木・宮浦クロスカップリング反応の条件に付したところ,高い収率でビアリール化合物が得られた。

ポリフルオロアリールホウ素化合物は塩基性条件下で極めて不安定なことが知られており,今回の条件下で,汎用的なポリフルオロアリールホウ素化合物の鈴木・宮浦クロスカップリング反応を検討しても低収率に留まった。

すなわち,高い反応性及び高い安定性を兼ね備えるハイブリッド型化合物と言える。この反応も幅広い基質一般性を示し,18例のビアリール化合物の合成に成功した。

研究グループは,今後は新しいファインケミカル創出に貢献する基盤技術として期待されるとしている。

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