アストロバイオロジーセンター(ABC),米テキサス大学,東京大学,国立天文台,工学院大学,中国北京大学は,VLT望遠鏡に搭載されたた多天体分光器MUSEを用いた分光観測により,ぎょしゃ座AB星 b(AB Aur b)からの水素原子輝線の検出に成功した(ニュースリリース)。
太陽のような恒星の周囲には,ガスと塵が集まった原始惑星系円盤が形成され,そこから地球型の小型惑星や木星型の巨大惑星が誕生する。この円盤は恒星の質量に関わらず普遍的に見られ,すばる望遠鏡やアルマ望遠鏡の観測でその詳細が明らかになってきた。
円盤内の構造から惑星の存在を間接的に推測する例は多いが,生まれたばかりの惑星を直接確認できたのはごく少数で,PDS70 b・cやAB Aur bなどに限られている。これは,多くの原始惑星が円盤に埋もれ,直接観測が困難なためである。
研究グループは,VLT望遠鏡に搭載されたた多天体分光器MUSEを用いた分光観測により,AB Aur bからの水素原子輝線の検出に成功した。輝線は,原始惑星を取り囲む,周惑星系円盤への質量降着の証拠と考えられる。
今回の観測で,まさにすばる望遠鏡で発見された原始惑星の位置に水素原子輝線が発見された。そのスペクトルの形状は,同様の質量降着を起こしているTタウリ型星で見られるものと類似していた。このような形状の水素原子輝線が発見された原始惑星は,これまでAB Aur bだけとなっている。
これは,ぎょしゃ座AB星の年齢が約200万年と非常に若く,惑星のまわりにはまだ多量の物質が見られるため,このぎょしゃ座AB星周りの惑星,AB Aur b は今まさに生まれつつある惑星,いわゆる原始惑星であることを強くサポートする。
このようなスペクトルが得られている原始惑星は他にはPDS70 bとcしかなく,原始惑星系としては2例目,円盤中に埋もれた原始惑星としては初めての観測になるという。
AB Aur b は,木星の約4倍の質量をもち,主星から地球-太陽間距離の93倍も離れた軌道を公転している。標準的な惑星系形成モデルでは,若い星のまわりの原始惑星系円盤で微惑星が成長し,それがさらに多量の物質を集めて木星のような巨大惑星が形成される。形成後に惑星が主星の近くや遠くに移動したり,散乱したりする可能性も示唆されている。
研究グループは,今回の物質降着の証拠は,太陽系には無い種類の遠方巨大惑星は円盤中で自己重力により巨大惑星が形成されるという重力不安定による惑星系形成を強く支持するとしている。
