矢野経済研究所は,ディスプレー・光学,電気・電子,一般産業用のベースフィルム及び加工フィルムなど,国内外の高機能フィルム市場(日本,韓国,台湾)を調査し,製品セグメント別の動向,参入企業の動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,2024年から2025年にかけての高機能フィルム市場は,コロナ禍のICT関連製品向け特需とその反動減の影響から完全に抜け出し,実需要に即した動きへと回復した一年だった。
主な高機能フィルムの成長率(メーカー出荷数量ベース)は,2024年は光学用PETフィルムが105.2%,一般産業用PETフィルムは114.6%,MLCCリリースフィルムが121.1%,PIフィルムは115.5%と,光学用PETフィルムを除き軒並み2ケタ成長を示したが,フィルムメーカー各社はこれを「急成長」ではなく特需後の反動需要減からの「回復」と位置付けているという。
2025年(見込み)の成長率は各フィルムとも概ね前年比103~108%程度にまで落ち着き,2026年から2027年にかけても年間一桁ペースの緩やかな成長になると予測する。
ここでは注目トピックとして,光学部材,PI,MLCCリリースフィルムのローエンド領域で中国ローカライズを取り上げた。高機能フィルム市場に参入するフィルムメーカーやコンバーターのシェアや,各社が展開するフィールドは,この数年間で少しずつ変わってきた。その背景にあるのが中国ローカルフィルムメーカーの台頭だとする。
主な高機能フィルムの状況を見ると,他の用途に比べ中国ローカルフィルムメーカーの販売量シェアが高い光学用PETフィルム市場では,ボリュームゾーンであるTV用LCDバックライト部材は中国ローカルフィルムメーカー,ハイエンド領域にあるAMOLEDやQLEDなど高精細なディスプレー部材は日本・韓国・台湾のフィルムメーカーが主に供給しているという。
2014年には中国ローカル勢の参入はごく一部にとどまっていたのに対し,2019年には約55%,2024年には約64%が中国ローカルフィルムメーカーにより供給されたものと推計する。
PIフィルム市場では,これまで中国ローカルフィルムメーカーは電気絶縁テープなど安価な汎用・ローエンド品向け製品の生産・供給が中心であり,FPC(Flexible Printed Circuit)やCOF(Chip on Film),グラファイトシート,一般産業用分野などミドルエンド以上の市場への参入は一部に限られていた。ミドルエンド以上の市場における中国ローカル勢の販売量シェアは2019年には全体の約4%にとどまっていたが,2024年には約11%まで拡大したものと推計した。
2024年に入って中国ローカルフィルムメーカーのシェアが急激に増えた用途がMLCCリリースフィルムで,これまで家電やアミューズメント,玩具など,日本・韓国・台湾のMLCCメーカーと競合しない領域で展開してきた中国ローカルのMLCCメーカーがスマートフォンのローエンド機種向けに生産・供給を開始しているという。
工程材であるMLCCリリースフィルムの使用量が増えるとともに,これまでの輸入から国内での調達に切り替えた結果,2022年には販売量シェア1%に満たないポジションであった中国ローカルコンバーターのMLCCリリースフィルム販売量は2024年には約4%まで拡大したものと推計した。
将来の市場として,液晶ディスプレーやFPCに代わる次世代の市場として,ビヨンド5G/6Gや自動運転(レベル3以上),空飛ぶクルマ,航空宇宙,ソフトロボットなどが注目されている。これらの新たな市場では,従来の高機能フィルムのスペックをはるかに超える高い性能・品質や,本来はトレードオフである性能の両立が求められるケースが多く,既存のフィルムでは対応が難しい。また,次世代の市場は現時点では本格的には立ち上がっておらず,足元のマーケット規模も小さい。
ここにフォーカスして開発されているフィルムメーカー各社の新規開発中のフィルムも現状では提案・サンプルワークの域を出ておらず,既存のボリュームゾーンに代わる柱まで育つには時間がかかると考えられるという。
新しいフィルムを次世代の市場・製品とマッチングさせていくためには,開発段階にある製品・市場であっても,部材や工程材としてどのようなフィルムが求められるのか,どのような性能がどのレベルで要求されるのかなどを見極め,先行して研究開発を進めることも必要だとする。
これまでに無い性能を持つ高機能フィルムの開発と提案を通して,次世代の市場・製品を育成する開発は日本メーカーが得意とする。形として現れないフィルムに対するニーズをキャッチアップし,新たに開発したフィルムの性能をマッチングさせる中で,これまでの最先端のさらに先にある市場を育成する。
同社は,日本のフィルムメーカーが果たす役割はまだまだ大きく,次世代の市場・製品の創出や拡大をどう進めていけるかが問われているとしている。




