住友重機械工業は,次世代の太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池に欠かせない電子輸送層と呼ばれる極薄の膜を,安価な材料を用いて環境負荷の少ないプロセスで形成する新規技術の開発に成功した(ニュースリリース)。
数種類の層が重なるペロブスカイト太陽電池において,電子輸送層は発電層(ペロブスカイト層)の上部または下部に成膜され,電気の素となる電子をペロブスカイト層から電極へスムーズに流す役割を担う。
そのため,ペロブスカイト層から電子を適切に受け取れる特性に設計すること(伝導帯準位設計)が重要。加えて,一定以上の温度を与えると破損するペロブスカイト層を損なわないで成膜する必要もある。
このような理由から,安価で大量生産に向くものの高エネルギーの粒子や高温環境を用いる従来の方法を単純に採用することはできない。そこで,各メーカーでは化学的な成膜方法を適用することを検討しているが,化学的な成膜方法の場合は高価な材料を用いることや低い量産性,原料ガスの有毒性・可燃性といった点で課題がある。
それらの課題に対応するために,独自技術である反応性プラズマ蒸着法(RPD法)を用いることで,ペロブスカイト太陽電池の電子輸送層に適する酸化スズ(SnO2)のみの膜を形成する新技術の開発に成功した。
RPD法は物理気相成長法(PVD)の一種で,低温・低ダメージ,大面積・高速成膜,危険性がなく,環境負荷も小さなガスの利用などの特長があり,ペロブスカイト層上への成膜や量産性,環境親和性に適している。SnO2は安価に手に入る金属酸化物であり,PVDで成膜すると優れた導電性を持つ膜になる。
しかし,電気の通りが良くなり過ぎると電子輸送層として働かない。同社のRPD法を用いることで,PVD方式としては世界で初めて,電子輸送層として機能する適度な絶縁性を持つSnO2膜を形成できることを確認した。
今回の新技術では,現在各メーカーで検討が進められている電子輸送層の成膜方法と比べて量産性が大幅に向上し,生産コストも大幅に下げることが可能になる。また,RPD法は太陽電池,フラットパネルディスプレー,有機ELパネル向けのITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜の成膜装置として実績があることから,電子輸送層の成膜と透明導電膜の成膜の各工程を連続的に組み合わせることもできるという。
同社は,ペロブスカイト太陽電池の普及に向け,この成膜技術の量産装置化とペロブスカイト太陽電池の製造工程への適用を目指すとしている。




