広島大学と宇和島プロジェクトは,生物が本来持っている蛍光(自家蛍光)を詳細に解析することにより,鮮魚の鮮度を非破壊的かつ定量的に評価できる可能性を調査し,少なくとも,トラウトサーモン,マダイ,ブリの3魚種に共通する蛍光成分を同定した(ニュースリリース)。
魚の内部状態の変化を非破壊で検出できる手法として,自家蛍光スペクトルに注目が集まっている。自家蛍光とは,外部から色素などを追加することなく,物質や細胞自体が光を発する性質のことで,その光の波長を自家蛍光スペクトルという。
しかしながら,こういった光を用いた計測は,光の照射条件や個体差,魚種間の成分構成の違いに左右されやすく,一般化された鮮度指標としての運用には課題が残っていた。
そこで研究グループは,トラウトサーモン・マダイ・ブリの切り身を同一条件下で冷蔵保存し,4種類の波長(275,365,405,455nm)で励起した自己蛍光スペクトルを時間経過とともに測定した。得られたスペクトルデータに対して,主成分分析(PCA)・非負値行列因子分解(NMF)・非対称ガウス分布によるカーブフィッティングを用いて解析を行ない,スペクトルの変化要因を分解・定量化した。
それぞれの手法における特徴と効果を比較検討するとともに,魚種に依存しない共通の変化成分の抽出を試みた結果,特に455nmの励起条件において,約540nm付近の蛍光(FAD)が,3魚種すべてにおいて保存時間とともに一貫して増加することが明らかとなった。これは,鮮度の低下(酸化)の進行を示す普遍的な指標となる可能性を示唆している。
一方で,このFAD由来の蛍光の変化と,うま味成分であるイノシン酸(IMP)の生成量との間に明確な相関は認められなかった。これは,IMPの前駆体であるアデノシン三リン酸(ATP)の分解経路と,FADの酸化が異なる代謝経路を経ていることを示しており,自家蛍光スペクトルを用いたうま味成分の推定には限界があることが明らかとなった。
さらに,抗酸化成分であるアスタキサンチンを多く含むトラウトサーモンでは,FAD由来の蛍光の増加が抑えられており,抗酸化物質の有無が酸化の進行やスペクトル変化に影響を及ぼすことも確認された。
研究グループは,この研究成果により,鮮度評価の信頼性を魚種に依存せず向上させることが可能となり,水産業全体の品質管理の標準化に貢献することが期待されるとしている。




