東北大学の研究グループは,実験室選択により,青色光毒性への耐性を進化的に獲得したショウジョウバエ系統(選択系統)の作出に成功した(ニュースリリース)。
2014年に研究グループは,過剰な青色光を数日間暴露することで様々な昆虫種を殺虫可能であることを発見した。この発見はノンケミカルな害虫防除技術として期待されており,世界的にも注目されている。
青色光は波長400〜500nmの可視光を指すが,昆虫種や発育段階によって有害な青色光の波長は異なる。そのため,青色光毒性に対する昆虫の耐性には複雑なメカニズムが関わっていると推測されているが,耐性因子についての詳細はわかっていなかった。
研究グループは,ハエと青色光毒性を用いた70世代以上の実験室選択を行なうことで,青色光耐性を獲得したハエ系統の作出と耐性獲得機構の特定に成功した。選択系統の成虫は体重が重く,顕著な脂質の蓄積がみられる肥満であることがわかった。
黒い見た目など,身体に光を通さない物理的な形質は有害な光から身を守る効果があることが知られているが,選択系統ではそのような特徴はみられなかった。青色光毒性が作用する仕組みとして,酸化ストレスの関連性が報告されている。
また,細胞内の脂肪などは酸化ストレスを緩和することが報告されている。これらの知見と一致して,選択系統は高い酸化ストレス耐性を示した。すなわち,選択系統は肥満によって,青色光毒性から生理的に身を守る仕組みを獲得したと考えられる。
選択系統の肥満と青色光耐性は腸内細菌によって支えられていることがわかった。コントロール系統と選択系統を比べると腸内細菌叢の組成に違いはみられず,どちらの系統も腸内細菌の99%が1種類の酢酸菌によって構成されていた。
しかし選択系統では,この酢酸菌の量が2倍以上多く,抗生物質処理によって腸内細菌を激減させると,痩せて青色光に弱いハエになった。研究グループはさらに,選択系統の細菌量が多い原因として,長い腸管と免疫系の変化を特定した。細菌量が増える方向の進化は細菌由来の利益を最大化する適応的な反応であると考えられるという。
肥満が形成される仕組みとしては,ミトコンドリア代謝の抑制と脂質利用遺伝子の抑制が推定された。また,肥満誘導遺伝子を標的とした遺伝子操作によって作成した肥満ハエも,選択系統と同様に高い青色光耐性を示すことが実証できた。
研究グループは,今回の発見は,腸内細菌を介した進化の理解,脂質や腸内細菌をターゲットとした効率的な青色光防除の開発に繋がることが期待できるとしている。
