シリコンと融合する未来の光源 100℃動作を実現する量子ドットレーザーの可能性

量子技術の最前線を狙うギャラガー博士(D.F.G Gallagher)に,最新の研究動向と今後の展望について執筆いただいた。ギャラガー博士は,米Photon Design Ltd CEO/創業者で,量子ドットレーザーを含む先端光デバイスのモデリング技術において,グローバルな研究連携を牽引している。

ポイントは,オンチップ光通信の要となる量子ドットレーザーの可能性と,その高温動作を支える革新的なシミュレーション技術。量子井戸から量子ドットへと進化するレーザー設計の現状を,博士に解説してもらった。

量子ドットレーザーと増幅器の設計について

半導体ダイオード・レーザーは,電気を狭い波長の光に変換する重要な装置の一つである。量子井戸(QW)ダイオード・レーザーは,50年以上前にチャールズ・ヘンリーによって発明され,厚さわずか数ナノメートルの薄い層に電子と正孔を閉じ込めることで機能し,最終的にダイオード・レーザーの効率を大幅に向上させた。

このわずか数ナノメートルの薄い層は,周囲の層よりもバンドギャップが低いため,層に近づいた電子や正孔はポテンシャル井戸に落ち,そこに閉じ込められる。いったん閉じ込められると,電子と正孔は再結合して光子を発生しやすくなり,効率が向上する。

QWは電子と正孔を1次元に閉じ込めるが,3次元すべてにキャリアを閉じ込めることができれば,さらに大きな効果が得られることが以前から知られていた。これが量子ドット(QD)レーザーの背景にある考え方である。

QDレーザーにはいくつかの利点がある。
1.3次元閉じ込めにより,与えられた電流に対して高い光利得が得られる。これにより,閾値の低いレーザーを実現できる。
2. ドットサイズを制御できれば,利得をより狭い波長範囲に限定できる。
3. QDレーザーは高温動作が可能である。

これらの利点のうち,3番目の高温動作が最も重要であろう。現在,電子チップはシリコンをベースにしている。シリコンは優れた電子材料だが,光を発生させるのは非常に苦手で,現在では,数メートル離れたコンピューター・ラックでさえ,光ファイバーで接続されている。それは光が電線よりもはるかにデータ伝送に適しているからである。シリコンCPUは,光信号を生成するInGaAsP製の他のチップと通信をしなければならないが,このチップにもQWレーザーは搭載されている。

しかし,最新のCPUの動作温度(摂氏90度まで)は,InGaAsPのQWレーザーが十分に動作するには温度が高すぎるために,2つのチップは互いに熱的に絶縁されていなければならない。

一方,QDレーザーは100℃でも効率的に動作させることが可能である。QDレーザーの高温動作は,CPUやGPUのパッケージにレーザーを組み込む可能性を開くもので,将来のCPUやGPUは,通信用の外部光チップを必要とせずに光リンクを介して互いに通信できるようになる。さらに,CPUとメモリモジュール間のインターフェースも光リンクに置き換わることで恩恵を受けるだろう。

現在,シリコン上にQDを直接成長させる研究は,英国のカーディフ大学,ベルギーのIMEC,米国のUCSB,日本のNICTなど,複数の企業や機関によって急速に進められている。Photon Design(PD社)は,QDの電気的・光学的特性のシミュレーターを開発し,この研究の最前線にいる多くの企業や機関と協力している。

QDの電気的・光学的特性をシミュレートするコンピュータ・モデルでは,1次元モデルを3次元モデルに置き換える必要があり,必要な計算量が大幅に増加するとともに,QWモデルにはなかった問題を解決させなければならない。

QWモデルは,構造のひずみをモデル化することから始めなければならないが,量子井戸コアの量子井戸格子定数は一般に周囲の材料の格子定数と大きく異なるため,QDではQWよりもさらに大きな課題となる。

PD社が開発したシミュレーションソフトウェアでは,これらの課題を解決し多くの効果を生みだしている。図3では,ピラミッド型量子ドットのひずみ場を示している。図4にInAs/InGaAs量子ドットから得られる電子と正孔の波動関数を示す。

このような洗練されたモデルに裏打ちされたファウンドリの経験値の増加により,QDレーザーの開発と応用は,今後5年間でコンピューター分野で急速に成長することが予想され,超並列コンピュータ・システムのさらなるスケーリングを可能にするだろう。

D.F.G Gallagher氏
Photon Design Ltd, UK, info@photond.com

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