民間による月面着陸を目指すispaceは,2025年6月6日に実施し,通信が途絶した月着陸船の着陸シーケンスに関してフライトデータを解析し,レーザーレンジファインダー(LRF)のハードウェア異常が着陸未達の技術的要因であると特定した(ニュースリリース)。
同社は当日の会見において,着陸未達が確定後に判明した事象として,①ランダー姿勢がほぼ垂直であったこと,②LRFでの有効な測定値の取得が遅れていたこと,③月面着陸に必要な速度まで減速が出来ていなかったこと,結果的に④月面へハードランディングした可能性が高いことを発表していた。
同社は解析を通じて,今回の事象がソフトウェア上の問題ではなくハードウェア異常にあること,またその中でも推進系の異常や電力等その他のシステム異常ではなく,LRFのハードウェア自体の異常が着陸未達の技術的要因であることを特定した。
具体的には,航行中にLRFが故障や性能劣化した可能性や,降下時のLRFの性能が事前の想定よりも低かった可能性が高いと考えているが,これらの異常が発生した背景として考え得る事象についても絞り込みを実施している。
同社では今後,①LRFを含む着陸センサの検証戦略・計画の見直し,②LRFを含む着陸センサの選定・構成・運用の見直しを行なうとともに,①第三者専門家を含む「改善タスクフォース」の立ち上げの上,後続ミッションに向けた開発上の対策の検討,②宇宙航空研究開発機構(JAXA)からの技術支援の拡張によるさらなる技術力の向上を行なうという。
これの影響として,LRF等の着陸センサの再選定や試験計画の見直し及び拡充等に係る費用として,後続するミッション3(正式名称:Team Draper Commercial Mission 1)及びミッション4(旧ミッション6)で合わせて最大15億円程度の開発費用増が見込まれるとしている。