矢野経済研究所は,2025年の偏光板及び部材フィルム世界市場を調査し,製品セグメント別の動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,2024年の偏光板世界市場(メーカー生産量ベース)は前年比112.0%の6億3,205万m2と推計した。面積効果が大きい大型TVパネル向け偏光板の需要が市場全体を牽引する形で,市場は2桁となる成長を遂げた。
2024年は在庫不足に備えた生産需要などでTVパネルの生産稼働率が大幅に回復した。春節連休後半より中国TVパネルメーカーは生産稼働率を急速に高め,CSOT,BOEなど大手メーカーを中心に90%以上のフル稼働となったほか,台湾や日本のTVパネルメーカーの稼働率も上昇し生産量が拡大した。
そのため,大型TVパネル向けを手掛ける偏光板メーカーを中心に,偏光板もフル生産が続き,偏光板世界市場も好調を維持した。2024年下期(7月~12月)での反動が懸念されたが,下期に入ってからもTVパネル向け需要に大きな落ち込みはなく,偏光板世界市場は需要量・生産量共に高水準を維持したという。
今回注目した2026年以降の偏光板世界市場は,近年続いた高成長の反動が懸念されるため,面積ベースでプラス成長を遂げるも,2桁のような市場成長は考えにくいという。2025年1月の中国の大規模設備更新と消費財買い替えのための補助金制度は2025年末に終了するほか,2024年から続く高透過型TVや省エネTVのブームは下降局面を迎える。
ただ,トランプ関税の影響は2025年下期以降のマーケットに影響を与えるが,そうしたなかでトランプ関税及びそれによる報復関税の競争がヒートアップすればするほど,中国は外部要因を除外できる中国国内の需要を固め,さらに国内需要で景気回復を含めた需給バランスを取ろうとする。
中国の補助金政策は2026年以降も何らかの形で継続されることも考えられ,この動きが偏光板マーケットにとって2026年以降の成長拡大につながる可能性もあると考える。
将来展望については,2025年の偏光板世界市場は前年比105.0%の6億6,340万2と予測した。2025年のディスプレーパネルや偏光板をリードするのは,補助金対象である電子デバイス機器や省エネTV,高透過型TVなどの中国国内需要が偏光板マーケットを牽引する見通しだとしている。
トランプ関税の前倒し需要は,関税が発令される直前の2月下旬~3月頃に関税率変動の影響を最小限にするため,TVパネルやスマートフォンなどの前倒し出荷が発生した。しかし,この駆け込み需要はTVセットメーカー側の在庫で対応するケースも多く,2025年第1四半期(1月~3月)での偏光板需要拡大への貢献は一部にとどまった。
2025年上半期(1月~6月)にかけて動いている需要のほとんどは中国の補助金向け需要である。 補助金対象の範囲は広く,省エネTVの他,教育カテゴリーとしてノートブックPCやスマートフォンなど海外製も10万円以下であれば補助金対象とされている。
中国では景気回復策として大規模な補助金政策を打ち立てており,今回の補助金政策の実施期間は2025年12月までと長く設定されている。 中国TVパネルメーカーの生産は2025年第2四半期(4月~6月)はフル稼働に達するほどの勢いで拡大が続いており,大型インチを中心としたHigh-End TVパネル向けの偏光板需要が急増している。
中国ECモールの大型イベントである618商戦をピークに,一旦ディスプレーパネルの生産拡大も落ち着く見込みで,偏光板需要は7月からやや減少する可能性がある。しかし,2025年第3四半期(7月~9月)より年末年始のイベントに向けた生産再開が始まる見込みで,2025年も一年を通して堅調な需要を維持する可能性があると予測した。