明大ら,拡散相関分光法で微小循環変化を可視化

明治大学と国立循環器病研究センターは,拡散相関分光法(DCS)を用いた非侵襲的・連続的な微小循環不全のモニタリング技術の実証に成功した(ニュースリリース)。

ショックとは,さまざまな理由で臓器に十分な血液が届かなくなる,命に関わる危険な状態。ショック状態では,心臓に近い太い血管の血圧などが一見正常に見えても,実際には酸素や栄養を細胞に届ける細い血管(微小循環)の働きが早い段階から悪くなっている。

そのため,この微小循環の状態を正しく見極めることが不可欠。現在,ショック患者のモニタリング方法として,乳酸値,皮膚温と中心温の較差(ΔT),混合静脈酸素飽和度(SvO2),中心静脈-動脈二酸化炭素差(PCO2ギャップ)などが用いられているが,侵襲性,時間的遅れ,継続的なモニタリングの困難性といった課題がある。これらの背景から,リアルタイムかつ非侵襲的に微小循環を評価できる新たな指標の開発が強く求められてきた。

DCSは,近赤外光の散乱パターンを解析することで,深部組織内の微小な血流速度を連続的・非侵襲的に測定できる光学技術。研究グループは,DCSを用いて皮膚表面から深部組織内の微小血管内血流速度をBFIとして測定し,従来の臨床指標と比較・検証した。

血液を段階的に脱血して出血性ショックを誘導し,その後,同量の輸血で回復を試みるという実験プロトコルを施行したところ,BFIは出血量の増加に伴って顕著に減少し,輸血により回復することが明らかとなった。

さらに,BFIはΔT,SvO2,PCO2ギャップ,乳酸値と統計学的に有意な相関を示し,rBFI(基準値に対する相対値)35.5%未満が乳酸上昇(22.5mg/dL以上)を高い特異度(100%)で予測できることも示された。

研究グループは,このことから,DCSは微小循環不全を早期に検出する手段として有用であり,これにより重症患者の循環状態をよりリアルタイムに評価し,適切な治療介入につなげる循環管理の実現が期待されるとしている。

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