神大ら,一画素カメラでホログラム動画の記録に成功

神戸大学とスペイン ジャウメ1世大学は,一画素センサーを使用したホログラム動画の記録に成功した(ニュースリリース)。

通常,画像を取得するには光センサーを二次元的に複数画素並べたイメージセンサーが必要。しかし近年ではわずか一画素で画像を取得する,一画素カメラの研究が進められており,次世代の分光技術や散乱透視技術への応用が期待されている。

一方で,従来の一画素カメラでは,観察対象が二次元物体に限られており,三次元物体を対象とする場合や,動的な対象への応用は困難だった。

このような背景のもと,研究グループは,およそ0.8秒で一枚のホログラムを記録できるようになり,動画記録に成功した。これはおよそ375倍もの高速化であり,例えるならば,人がゆっくり歩く速度(時速約0.8km)から,新幹線の速度(時速約300km)に変わったような感じだという。

22kHzで動作する空間光変調器に対してホログラムを記録するためのパターンを表示し,このパターンを観察対象に投影する。そして観察対象からの光をフォトダイオードのような一画素センサーで取得する。この操作を,空間光変調器に表示するパターンを切り替えて複数回行なう。その後,一画素センサーで得られた信号を解析することで,三次元分布の復元が可能となる。

原理検証実験では,大学のロゴマークを印刷したものを物体として用い,これを移動ステージに乗せて等速で移動させることで,徐々に移動する大学のロゴマークをとらえることに成功した。さらに,大学のロゴマークと数字が印刷された物体を異なる奥行位置に配置し,三次元観察が可能かどうかも実証した。

また,この技術を散乱体の向こう側を可視化するための顕微鏡に応用し,マウスの頭蓋骨背後に存在する物体の可視化にも成功している。加えて,圧縮センシングという技術を組み合わせることで,計測時間を短縮させ,最速で28Hzでの観察も可能であることを数値的に評価した。

研究グループは,この研究は,散乱体の向こう側を移動する物体を可視化できることから,低侵襲な生体深部三次元観察に応用されることが期待されるとしている。

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