愛媛大ら,蛍光X線ホログラフィーを高圧下で測定

愛媛大学,広島大学,名古屋工業大学,広島市立大学は,蛍光X線ホログラフィーの13.3GPaまでの高圧下測定に初めて成功した(ニュースリリース)。

蛍光X線ホログラフィーは特定元素周りの3次元の原子配置を可視化できる優れた構造解析手法。この手法は機能性材料のどの部分が得られた機能に関わっているかを原子レベルで可視化したいという要望に応える手法として広く活用されている。

蛍光X線ホログラフィーに原子間距離をコントロールできる圧力装置を組み合わせれば,圧力誘起の超伝導物質や高圧下の惑星内部を構成する物質探索などにも適用でき,原子像の再生がより情報に富むものとなることが期待される。

しかし,その蛍光X線ホログラフィーはシグナルが非常に弱い。高圧発生装置であるダイヤモンドアンビルセル(DAC)の素材として利用される一般的な単結晶ダイヤモンドは,試料からの蛍光X線を光源とする擬コッセル線を発生させ,これが強いノイズとなって試料からのホログラム像を完全に打ち消してしまう。

そこで,研究グループはナノ多結晶体のダイヤモンド(NPD)をアンビルとして用いることで擬コッセル線の除去を試みたところ,今回試料とした常誘電体単結晶試料SrTiO3のSrからの蛍光X線によるホログラム像が鮮明に観測された。このホログラム像ではSrTiO3試料の単結晶性に由来するコッセル線も観測された。

一方,NPDは擬コッセル線を発生しない代わりにその多結晶性から,粉末回折パターンを試料のホログラム像に重畳させる。

このノイズを取り除くために,イットリウム(Y)金属箔を粉末回折パターンの除去フィルターとして二次元検出器の前に設置した。この結果,試料SrTiO3のみの明瞭なホログラム像とコッセル線の抽出に13.3GPaまでの高圧下で成功した。この時,金属箔を揺動させることで箔の均質性を高めることもノイズ除去に重要だと分かった。

13.3GPaの最大圧力まで得られたホログラム像からは,圧力を加えるに従って結晶格子が収縮することに伴う連続的な変化が観測された。このように高圧下においてある一つのSrの周辺のTi原子や別のSr原子の配置を明瞭に観測することに成功した。

研究グループは,今後,圧力誘起の構造相転移の前駆現象の観測,原子間距離をコントロールした時のドープ元素の挙動といった,物質科学,材料科学への広い応用が期待されるとしている。

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