矢野経済研究所は,国内および世界のナノ材料市場を調査し,ナノ材料別やセグメント別の動向,参入企業動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
この調査では,8種類のナノメートル領域の材料を対象とした。それによると,2025年のナノ材料国内市場規模(メーカー出荷金額ベース)は1兆4,117億円と予測した。
種類別に市場をみると,ナノエレクトロニクス材料が全体市場の43.0%を占め,ナノフォトニクス材料が23.3%と続いている。ナノエレクトロニクス材料では電子デバイスの微細化が極限まで進んでおり,微細化するスピードが鈍化する一方で,消費電力の増大は止まらない。高い性能と低消費電力を同時に追求することが,ナノメートル領域の電子部品製造の主要課題となっている。
ナノテクロノジーと材料科学の発展には,様々な基盤技術が重要な役割を果たしている。例えば,微細加工技術や,材料プロセスと成形が統合された積層造形などの製造技術は,ナノメートルスケールでの精密な制御や構造の作成を可能にするという。
また,高分解能顕微鏡などの先端計測技術は,ナノメートルスケールの観察や分析を行なうためのツールとして極めて重要である。さらに,第一原理計算やシミュレーション,モデリングによる解析技術,データサイエンスなども重要な技術となっている。
一方で,エレクトロニクスの発展は消費電力の増大という負の側面を生み出してきた。これからのエレクトロニクスデバイスは,高性能化とともにエネルギー効率の向上を伴っていく必要がある。エネルギー効率の高いデバイスや省エネルギーなシステムの開発が要求され,持続可能なテクノロジーの実現に寄与することが欠かせないとしている。
将来展望について,2050年のナノ材料国内市場規模は6兆8,460億円になると予測した。新たなナノ材料開発は簡単に進展するようなものではないが,AI・機械学習の活用などによって新しい材料の発見が加速する可能性があり,今後もさまざまな発展が想定されている。
また,新たなナノ材料開発が進展することで,性能向上や新しいアプリケーションの可能性が広がる。これには,異なる物理的性質や電気的性質を持つ材料の探索が含まれる。ナノ材料開発は,新たな高性能デバイスの実現に結び付く可能性があり,より小型化されたトランジスタや高速・高効率のデバイスが開発されることで,情報処理技術や通信技術の向上が期待されるという。