大阪大学の研究グループは,レーザー金属3Dプリンティング技術と表面改質処理を組み合わせることで,二酸化炭素を都市ガスの主成分であるメタンに変換できる金属製自己触媒反応器の開発に成功した(ニュースリリース)。
CO2のメタネーション反応(CO2+4H2→CH4+2H2O)は,高密度でエネルギーを貯蔵する方法としてだけでなく,CO2を無毒で豊富なC1原料として利用する手法としても有望だが,低温域で高いCO2転化率,CH4選択性を示す触媒の開発が不可欠となる。
従来のルテニウム(Ru)触媒を用いて開発した金属製自己触媒反応器と同等の活性を達成するには,20気圧の加圧が必要であるのに対して,この触媒は1気圧140ºCという低温において高活性・高選択性を示す。
さらに,高活性なRu活性種の微細構造について詳細な調査したところ,負に帯電した(Ti3O7)2-層が低酸化状態の孤立したRun+種(0<n<4)の生成と安定化を促進し,大気圧の穏やかな条件下でのCO2活性化を可能とする学説を立証したという。
また,この高活性な粉末状Ru触媒の知見を応用することで,触媒機能と反応管としての機能を併せ持った金属製自己触媒反応器の開発に成功。Ti-6Al-4V合金粉末を原料とし,レーザー金属3Dプリンティングによりチャンネル構造を付与した触媒反応管を造形し,これを酸化処理,NaOH中で水熱処理すると,表面にNa2Ti3O7ナノファイバーを形成することができる。このNa2Ti3O7ナノファイバーにRuイオンを導入すると,CO2メタン化反応において粉末触媒と同様の低温活性が発現することを明らかにした。
今回開発した触媒は,「調製が簡便」「工場廃熱を利用可能な低温(140℃付近)でも駆動する」「耐久性に優れる」など実用化に不可欠な基盤要素を兼ね備える。また,金属3Dプリンターで造形した金属製自己触媒反応器は,高い機械的強度,熱伝導性に加え,多様な触媒プロセスに最適な構造を提案できることから,触媒分野のみならず,金属3Dプリンティング技術を基盤としたマテリアルサイエンス分野へも多大な波及効果が期待されるという。
さらに,これまでCO2メタン化反応にはRu0ナノ粒子が触媒活性種として有効であると考えられてきたが,反応条件下での様々な分光学的手法を駆使した触媒微細構造解析を通して,孤立したRun+種(0<n<4)が低温活性を駆動する真の活性種であるという新たな学説も明らかにしており,学術的な意義も極めて高いものだとしている。