(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,「経済安全保障重要技術育成プログラム(Kプロ)」において,金属積層造形システムの開発を推進するプロジェクトを採択した。
このプロジェクトには,アマダ,パナソニックホールディングス,東京大学,大阪大学,古河電気工業,(国研)日本原子力研究開発機構,松浦機械製作所,島津製作所,MI-6,石川県,金沢大学などが参画し,各機関の専門技術を活かして次世代の金属積層造形技術の開発に取り組む。
金属積層造形は,従来の製造方法では困難だった複雑な形状や高機能材料の造形を可能にする技術であり,特に航空宇宙,エネルギー,医療分野などでの応用が期待されている。レーザーを用いた積層造形技術は,高精度・高機能な部品製造を実現する鍵となっており,このプロジェクトでは,青色半導体レーザーや近赤外ファイバレーザーを活用することで,純銅などの高電気伝導率材料の造形技術の確立を目指す。
参画機関のうち,大阪大学はレーザー加工技術の研究を主導し,より安定した造形プロセスの確立に寄与する。古河電気工業は高性能なフォトニクスデバイスを通じて,レーザー光源の品質向上に貢献する。また,パナソニックホールディングスは高精度な制御技術を提供し,造形の精度向上と一貫性の確保を支援する。東京大学はシミュレーション技術を活用し,造形プロセスの解析を進めることで最適なパラメータを導出し,造形品質の向上を図る。
プロジェクトでは,造形プロセスの安定性向上や品質保証の規格化も重要な課題とされており,製造業の現場で迅速に高機能部品を供給するための技術基盤の構築を目指している。これにより,オンサイトでの部品製造が可能となり,納期の短縮や製造の効率化が期待される。
さらに,レーザー技術の進化により,より精密で信頼性の高い金属積層造形が可能になり,国内製造業の競争力向上にも貢献すると考えられる。特に,金属積層造形の普及が進めば,設計の自由度が向上し,軽量化や高機能化を実現した新しい製品開発につながる。これにより,次世代のものづくり基盤技術としての確立が進み,日本の産業競争力の強化にも寄与する重要な取り組みとなる。