大阪大学の研究グループは,金属3Dプリンティング技術によって自発的,階層的,かつ特異的に形成される,マイクロメートルスケールの結晶学的ラメラ構造と,ナノメートルサイズのセル組織の強度への寄与を,定量的に個別解析し,セル組織が極めて大きな強化をもたらす因子であることを明らかにした(ニュースリリース)。
合金の高強度化や自在な強度設計のため,強化因子の性質や特徴を明確にすることや制御が求められている。しかし,金属3Dプリンティングによって作製した造形物内部には様々なスケールにて複数の特異構造が共存するため,定量的な強化因子の同定は実現していない。
研究グループでは,これまでに培ってきた金属3Dプリンティングでの人為的組織制御技術を駆使し,マイクロメートルスケールの結晶学的ラメラ構造と,ナノメートルサイズのセル組織からなる造形体を,IN718にて世界に先駆けて獲得することに成功した。
そこで研究グループは,結晶学的ラメラ構造とセル組織の存在/非存在を独立に制御することができれば,強化に対する寄与を単離可能であると着想し,結晶学的ラメラ構造とセル組織,それぞれの消去を試み,結晶学的ラメラ構造は,新たなスキャンストラテジーの設計により消去した。
この構造は,結晶方位の異なる2つの板状の領域が一方向に重なった構造を有する。厚く造形方向に<011>が向いている方を主層,薄く造形方向に<001>が向いている方を副層と呼び,両者が約100μmの周期で並んでいる。このラメラ構造は,溶融池の中央底部から,造形方向に<001>成長する結晶粒が生まれ,主層の間に副層が挿入されることで形成される。
新設計したスキャンストラテジーでは,層間でピッチを半周期分ずらすことで,この<001>の成長を阻害し,<001>に配向した副層を消去することに成功した。
セル組織は,LPBF法での超急冷凝固の結果形成されるネットワーク状の凝固組織であり,偏析と転位の集積を特徴とする。そのため,拡散によって組成のムラを解消するとともに転位の再配列や消滅を促進し,かつ,結晶集合組織の変化をもたらす粒成長や再結晶を抑制するための緻密な熱処理条件によりセル組織を除去した。
さらにラメラ構造の有無,セル組織の有無の組み合わせで4種の試料を作製し,圧縮試験を行なった結果,ラメラ構造の寄与により数%,そしてセル組織の寄与により40%もの強度上昇がもたらされた。よって,セル組織がLPBF材特有の強化因子だと明らかになった。
研究グループは,今後は,セル組織を積極的に活用した合金の力学機能設計,強度向上が期待されるとしている。




