東京科学大ら,人体組織を透過して光るガーゼを開発

東京科学大学,昭和大学,京都工芸繊維大学は,医療現場で広く使用されている近赤外発光色素であるインドシアニングリーン(ICG)を用いた体内手術用の人体組織を透過して光るガーゼを開発した(ニュースリリース)。

体内手術用ガーゼは,外科手術において止血や汚染された術野を整える目的だけでなく,体内組織の圧排や手術の進行方向の誘導にも使われ,その用途は多岐に及ぶ。

一方,手術中に体内で見失い,ガーゼ遺残を生じることがしばしば問題となっており,ガーゼカウントやX線造影糸を包含したガーゼを用いて遺残の有無を確認することが多い。しかし,これらは外科医や看護師にとって肉体的・精神的負担となり,また患者がX線被爆を受けるという問題があった。

研究グループは,まず,綿ガーゼをICG水溶液中,加熱条件で60分間,振とうした後,脱水・洗浄・乾燥した試料を調製し,近赤外蛍光の有無を検討した。その結果,発光を示したものの,ICGがガーゼに十分に定着しておらず,擬似的な体液中で顕著な漏洩が見られた。

また,ガーゼはICGが形成する凝集体由来の薄緑色を呈色していた。そこで,上記で染色したガーゼをオートクレーブで132℃,8分間蒸熱処理したところ,発光強度はわずかに低下したものの薄緑色が脱色され,ICG がよく定着して堅牢性が向上することを見出した。

そこで,未染色の綿ガーゼをICG水溶液に浸漬し,そのままオートクレーブ内で昇温して,132℃,15分間染色したガーゼを調製したところ,染色の処理時間が短いにもかかわらず,発光強度の顕著な増大と,高い堅牢性を示した。

光る手術用ガーゼの実用化を目指して,オートクレーブ中で染色したガーゼを,厚さ約10mmの胃壁,小腸や大腸の腸間膜を隔てて配置したところ,標準的なFISであるSPY-PHIシステムにより十分な蛍光強度で観察が可能だった。

また,腹腔鏡およびロボット支援下の大腸手術において内側アプローチから外側アプローチに移行する際の手術ガイドとしても有用だった。さらに体内での紛失を想定して小腸間膜内にガーゼを配置したところ,間膜を透過した近赤外蛍光によりガーゼの存在を容易に同定でき,かつ30分~2時間の留置後もガーゼと接触した組織の観察においてICGの漏出や再付着による発光を認めなかった。

研究グループは,光る手術用ガーゼの使用により,手術の進行が視覚的にガイドでき,かつ術後にガーゼを探す手間や時間の短縮とX線造影糸包含ガーゼで必要となる放射線被曝が軽減される可能性があるとしている。

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